例え切れたとしても


書類の内容が入ってこないな…少し気持ちでも落ち着かせよう。

マーモンはため息をつきながら立ち上がる。

「何処行くんだ?」

「飲み物取ってくる」

「飲み物ならあるぞ、レモネード」

「ム…?」

スクアーロは立ち上がり、自室の冷蔵庫に向かうと中を開けてペットボトルのレモネードを手に取りマーモンへと投げ渡す。
マーモンはそれを受け取り、よく見てみると確かにレモネードだった。

「意外、君こういう甘いの飲むんだ」

「あ"?俺は飲まねぇよ」

「…?ならなんで君の冷蔵庫にあるのさ?」

「なんでってそりゃお前が飲むからだろ」

「…」

…え?

きょとんとした表情でスクアーロを見ると、スクアーロはマーモンから視線を外して書類を見始める。

「長時間いつも拘束してるからな、その礼だ
お前好きだったろ、レモネード」

「好きだけど…君の前でそんなに飲んだこと無いのによく知ってるね」

普段、書類整理を頼まれるたびに眠気覚ましとして飲むのはココア。
レモネードはほんの数回しか飲んだことはないはず。

「赤ん坊の頃にベルとよく飲んでたの覚えてたんだよ
赤ん坊の癖によく飲むなと思ってたら、ルッスーリアが言ってたんだぁ」

「…へぇ…」

ペットボトルを見つめながらマーモンはポツリと呟く。

本当、普段はがさつなのにこういうところは気が利く。

「…赤ん坊の頃から、僕の事ちゃんと見ててくれてたんだ」

「…まぁな」

ゆっくりと歩き先程まで座っていたスクアーロの隣へと腰掛けながら頬を緩ませる。
スクアーロはマーモンを一瞥すると再び書類を見た。

「君の守備範囲は結構広いんだね、作戦隊長様」

「いらん勘違いするなぁ!赤ん坊のお前にそんな気起こすかぁ!」

「冗談だよ、冗談」

「…ったく…」

冗談に慌てふためくスクアーロを見てマーモンは"ふふ"と小さく微笑み、スクアーロは息を吐きながら書類をテーブルへと置いた。

「…別に覚えてたのには深い意味はねぇ、ただなんとなくだ」

「わかってるよ、そんなに言わなくても
でもそっか…知っててくれたんだ…」

「なにをそんなににやにやしてんだお前」

頬の緩みが抑えきれていなかったのか、スクアーロに指摘されてしまう。

「それだけ嬉しかったのさ、君の中で、ボスには勝らないにしろ僕の事を気にかけてくれていることが」

「…お前よ」

「ムッ」

ペットボトルの蓋を開け、一口飲んだあとにそう言うとスクアーロが顔を覗き込んできて驚いてしまい、少し引いてしまう。

「なに?君も飲みたい?」

「いら…あー、いや…もらう」  

断ろうとしていたスクアーロだったが、なにやら考え込んだ後にマーモンからペットボトルを受け取り口へと含んだ。

「…甘ぇ」

「少し酸味があるけど、君からしたらそうかもね」

「…お前、結構嫉妬するよな
金大好きで他人に興味なさそうなのによ」

レモネードの甘さが口内に広がり、少し表情を歪めながらスクアーロは言った。

嫉妬深い…。

「…確かにそうだね、ボスとスクアーロの関係をわかってはいるけれどこればかりは仕方がないさ」

「仕方がねぇ、な…」

「すまないね、こんなに嫉妬深くて」

「いや、おあいこだから気にするなぁ」

「おあいこ…?なにがさ」










「嫉妬、してんのだよ」










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