とある科学者と術士の話
「マーモン、持ってきましたよ」
会場からワインを一本とグラスを手にしながらマーモンの部屋へと戻ってきた風。
ソファーで座っているマーモンに告げると、"ありがと"と言いながらマーモンは立ち上がった。
「もう大丈夫ですか?」
「あぁ、ヴェルデの薬飲んだからね
…といっても、少し飲むんだけど」
「飲まない方がいいのでは?」
「そうだね、あまり飲みたくはないかな」
「それなら」
「でも…」
風からグラスを受け取りコトッと優しくテーブルへと置く。
「過去の事は、酔って話をする位が丁度いいのさ」
「…」
「おつまみもいるなら適当に持ってきなよ」
「いえ、大丈夫です
おつまみもあると進んでしまいそうで」
「君の場合、結構飲んでも大丈夫だろう?
別に僕に気を使わなくても」
「そういうわけではありません
貴方がいない間、私もコロネロやリボーンから飲まされていたのでこれ以上は」
「…そう、ならいいや
もし僕が潰れたら介抱、お願いね」
「安心してください、丁重に介抱しますので」
マーモンがソファーに座るのを見ながら風はワインボトルをテーブルに置いて隣に腰掛ける。
ボトルを開け、グラスへと注ぐ様子をマーモンはジッと眺めていた。
「マーモンは、大人に戻ってから飲んだことあります?」
「いや、ないよ
元々酔いやすいからそんなに嗜んでいなかったしね」
2つのグラスにワインが注ぎ終わり、2人はグラスを手にとって軽くコツンとグラス同士を合わせた。
風はワインを一口含んで嗜み、チラリとマーモンへと顔を向けた。
「…」
「あの、マーモン大丈夫ですか?」
ぽぁッと頬が赤らみ、グラスを手に持ったまま固まってしまっているのを見て声をかけてみる。
「…薬飲んだからって、調子に乗るんじゃなかった」
「あらら…もう飲むのはやめたほう…が」
苦笑しながらマーモンの持っているグラスを回収しようと手を伸ばした所、マーモンはそのまま残りをグイッと飲み干しダンッとテーブルにグラスを勢いよく置いた。
「そんな飲み方をしたら…お水、お水飲んでください!」
「はぁッ…いいから…さっきも言ったろ…
"酔って話をする位が丁度いい"ってさ…君は黙って聞いて…」
風がペットボトルを手渡そうとするもマーモンはそれを手で拒否をする。
口元を袖で拭い、風をジトリとした目つきで見ながら言うマーモンの気迫に風は押されてしまう。
「酔って話が出来ないほうが問題かと思うのですが」
「大丈夫、ちゃんと話す
じゃないと君…」
「マーモン?!」
ぐらりとマーモンの体が揺れ、そのままポフッと風の体へと倒れ込む。
風が受け止めると、マーモンが口元を押さえていることに気付いた。
「…ごめん…ちょっと…横にさせて…」
「…だから言ったではないですか、もう…」
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