飲酒注意報
「…ふぅ」
マーモンがトイレから出て手を拭いていると、リボーンとばたりと出会ってしまう。
「よぉ」
「…また君か」
「そんな顔するな、飲み会だぞ」
嫌そうな表情をしてしまっていたらしく、リボーンに指摘をされてマーモンはむにむにと自分の頬を揉み、小さく息を吐いた。
「拉致されて強制参加させられた飲み会程、嫌なものはないよ」
「その割には大量に食ってたじゃねぇか、甘いもん」
「そのくらいしかこの飲み会にメリットないから」
「相変わらずだな、お前はよ」
横を通り過ぎ、会場である部屋へと戻ろうとするマーモンをリボーンはスッと瞳を細めて横目で見た。。
「その割に、風とは嫌がらねぇみたいだな…お前」
「!」
リボーンの言葉にマーモンは目を見開き、動きを止めて顔を見る。
その表情にリボーンは口角を上げて顔を近付けた。
「図星、だな」
「…なんのことか、僕には心当たりがないんだけど」
「嘘つけ、お前と風がホテルにいるの見たんだよ」
「ホテル…」
あの時か。
風と水族館に行った時のことを思い出し、頬に一筋の汗が伝う。
「気のせいじゃないかな?
僕があいつとそんなところに行く意味が」
「ほら、これ」
否定をするとリボーンはスマホを取り出して操作をした後、画面をマーモンの目の前へと差し出しそれを見た。
そこには、風とマーモンがホテル内で隣り合って歩いている姿。
「これを見てもそう言ってられんのか?」
「…チッ」
証拠を出されなにも言えなくなったマーモンは小さく舌打ちをすると壁に寄りかかって腕組をした。
「それを聞いてどうするつもり?
僕の事、脅そうとしてる?」
「おいおい、俺がそんな事する小さい男だと思うのか?」
トンッとマーモンの顔の隣に手をついてスッとリボーンは顔を近付ける。
マーモンはその瞳をジッと見つめ返した。
「お前に仕事を頼みたい」
「…仕事?それはヴァリアー経由じゃだめなのかい?」
「そうだ、ヴァリアーの受け持つ任務とは内容が違うからな
といっても、そう難しいものではない」
「ふぅん…まぁ、内容次第にもよるかな
あと、報酬」
「なんだ、案外すんなり受けてくれるんだな」
顎に手を当て考えた末に出したマーモンの返答にリボーンは少し拍子抜けをする。
「いやまぁ、確かに君のことは嫌いだけどそれとこれとは話が別だからね
利害が一致するのであれば受けるに決まっているよ」
「そうか、お前のそういうところは楽でいいわ」
「…それで」
マーモンは未だに自分には顔を近付けているリボーンを訝しげな表情で見つめた。
「君、近いんだけど」
「お前の場合、すぐ逃げようとするからな
念の為だ」
「念の為、って距離感じゃないと思うけどね」
「まぁ、いいじゃねぇか
それにしても…」
「!」
リボーンはしばらくマーモンの顔を見た後に、顎を指でクイッと持ち上げフードを脱がした。
マーモンの表情が露わになり、マーモンは驚いたように瞳を丸くしている。
「ちょ、フード取るな!」
「お前案外可愛い顔してるじゃねぇ
本当に男か?」
「男だ、馬鹿!
君、もしかして酔ってるのかい?!」
「んなわけあるか、スカルじゃあるまいし
ちなみにあいつは酔い潰れたからもう部屋に放り投げてきた」
「あぁ、だから君ここにいたのか…じゃなくて、早く離れろ馴れ馴れしい!」
「うるせぇ奴だな、ちびのくせにギャーギャーと」
ポカポカと離れさせようとマーモンがリボーンの胸板を叩くも、特にリボーンは気にする様子はない。
「お前、風の場合は拒否しないのに俺は拒否するのか?」
「ッ…あいつも拒否してるから!
ただ、あいつの場合はポジティブ筋肉で…」
「ポジティブ筋肉」
「そもそも、今はあいつの話は関係ないだろ!」
「なにをそんなに必死になってんだ?
お前、もしかして…」
「違う!!」
「!」
マーモンの口から大きな声が出て、リボーンは少し肩を跳ねさせてマーモンを見つめた。
「ッ…違う…僕は…」
「…マーモン」
自分の口から思ったよりも大きな声が出たことにマーモンはハッとすると、口元を手で覆い隠しながら呟くように言葉を紡ぐ。
リボーンはそれを見て手をソッと伸ばして頬に触れようとした。
パシッ。
「「!」」
リボーンの手を阻止するかのように手を払われ、2人は驚きながら手の主を見た。
「リボーン、なにをしているんですか?」
「…風」
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