後遺症


「あぁ、ごめん
なんかこの前のヴェルデの獣化の薬、解毒薬飲んでから妙に人肌?が恋しくてね」

「人肌…」

治験を行ったマーモン。
色々あって解毒薬を飲んで早3日。
マーモンは風に向かい合うように太腿の上に座り、首を傾げながら説明をし、それを風は聞いていた。

「普段の僕なら考えられない事だから、ヴェルデに相談したんだけど
たぶん、猫化した時に君がやたらくっついてきたからそれが後遺症的な事になってるんじゃないかって言っててね」

「…それで、私に人肌を求めていると
ふふ、貴方自らが望んで私を求めてくれるのは非常に嬉し」

「いや、ただアジト内にいるのが僕と君だけだからってだけ
ベルもスクアーロもルッスーリアもいないから、消去法で」

「…ま、まぁ…消去法だとしても私を望んでくれていることには変わりありません
思う存分私を堪能してください」

「あぁ、そうさせてもらうよ」

にこーと満面の笑みを浮かべながら両手を差し出す風をスルーし、マーモンはぽふりと風に寄りかかり首筋に顔を埋めた。

あぁぁ…マーモンが自ら私に…。

この瞬間がとても幸せに感じ、風の表情が緩んでしまう。
マーモンの背中へと手を伸ばして優しく抱きしめると、体がピクリと震えるのを感じた。

「おや、どうしましたか?
力、強いですかね?」

「…いや…ちょっと…」

「…?」

少し気まずそうに言うマーモンの言動に風は首を傾げる。

どうしたのでしょうか、なにか問題でも…。

「君のせいではないよ」

風の考えを察したのかマーモンは首筋から顔を離してススーッと風から顔を逸らす。

「では、どうしました?」

「…こ、この前…」

「この前?」

「…猫化した時、君のことを襲いかけた時のことふと思い出してしまって…
今のこの状態が、その時と同じようだから…」

頬を少し赤く染めながらぽつぽつと言葉を呟くマーモン。
風は"あぁ"とその時の事を思い出す。

「…とても積極的でしたねぇ」

「茶化さないでよ」

「茶化していませんよ?
あの時は貴方の意思ではないことは分かっていますので安心してください」

「ムムム」

「でも、今は貴方の意思でこうして私の上に跨り、距離を縮めてくれている…」

マーモンの手に自分の指を絡めて優しく手を握りしめる。

「これ程までに幸せなことなんて、ありません」
 
はにかみながら繋いだマーモンの手の甲にチュッと軽くキスを落とす。

「ッ…あーもう、やめだやめ
君、そうやって調子に乗るから」

「こらこら、だめですよ」

「ムムッ」

風の行動に更に顔に熱が集まる。
マーモンはフードを深く被り直し、風の上から退こうと腰を上げるとガシッと腰を掴まれてそのまま座らせられてしまう。

「私のことを堪能したいのでしょう?
それならば、まだ足りないのでは?」

「ん…ッ…ねぇ…そこ、掴むのやめて…」

腰を掴んだまま耳元で囁かれ、マーモンの腰が微かに跳ねる。
腰に触れている風の手首に手を伸ばして自分の手を重ねた。

「君の手つき、いちいち厭らしいんだよ…くすぐったくて仕方ない…」

「そういうつもりではないのですが…まぁ、そうですね…
貴方に触れるとなると、自然とそうなってしまうのかもしれません」

「うぁッ」

以前尻尾があったであろう尾てい骨付近に指を這わせると、マーモンが上ずった声をあげる。

「マーモン、以前にも申し上げたでしょう?
"貴方の事をぐずぐすに甘やかして、めいいっぱい犯したい"と
それなのに、貴方はそんな私の話を忘れてこうも抱きつき、愛らしい姿を見せて…」

「ひッ、あッ…お、おい」

尾てい骨から太腿にかけてねっとりとした手つきで指が這い、くすぐったさから声が漏れ、離れようと風の肩を押す。
しかし、離れることなんてできない。
むしろ、空いている片手で腰を引き寄せて更に密着されてしまう。










「…これはもう、手を出してもよい、と捉えても…?」










「ッだ…だめに決まってるだろ…?!」

低い囁き耳まで赤くなりながらマーモンは風の言葉を慌てて否定をし顔をバッと上げる。
その様子に風はクスクスと口元に手を当てながら笑みを溢しながら愛おしそうに見つめていた。  

「私に慣れてくださるのは嬉しいですが、己の行動をよく考えてくださいね?
貴方は本当に、警戒心があるようでないのですから
少しは警戒をするように」

「君に警戒って…今更すぎるような気がするんだけど…
そもそも、僕は警戒を怠った覚えはないよ
今だって、君のことを警戒…」

「警戒してるのであればこのようにくっついたりしないと思いますが」

「…ムムム」

風の言葉になにも言えずマーモンは黙り込んでしまう。

確かに、風の言う通り最近は警戒を解いてしまってるかも…風は僕の嫌がることはしないとわかってるし。

風の言う通り、気を引き締めないと…。

チラリと風に視線を向けると、"ん?"と首を傾げながらマーモンの頬に手を添えて優しく撫で始める。









…まぁ…。








マーモンはポフッと風に寄りかかり、ぐりぐりと額を肩へと押し当てる。

「おや、甘えん坊ですか?」

「うるさい、もう少しだけこのままでいさせて」

「私は構いませんよ、貴方が望むのならば、いつまでも」











今度からで、いいか。










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