嫌味な奴に一泡を


「...さて、と...着きましたよ、マーモン」

ノンストップで移動をしていき早々にアジトについた風。
マーモンの部屋の窓を開けておいたのかガラリと開けてそこから中へと入る。

「...ありがとう...とりあえず下ろしてくれるかい?」

「え、嫌ですよ
だって抱っこしてほしいのでしょう?
せっかく貴方が私におねだりをしてくれたのです
この機を逃すわけにはいきません」

笑顔を崩さずに言うとソファーへと腰掛けながらマーモンを太ももの上へと向かい合うように座らせた。

「いや、確かに言ったけどそういうつもりで言ったわけじゃないよ」

こうなっては離してくれないのが目に見えている。
マーモンは諦めて風に寄りかかり大人しくなった。

「ふふッ、甘えてくださるのですか?」

「違うよ、諦めただけ
それに君の体温高くて暖かいからちょうどいいんだよね…」

すりっと風の首筋に顔を擦り寄らせて眠たそうに欠伸を漏らす。

「あ…そういえば…」

「どうしました?」

「ヴェルデに報告する事があったのに忘れちゃったなって
けっこう重要なこと、僕にとってはね」

「おや…それは困りましたね
ヴェルデの元へ行きますか?」

「…ムムム…いや、いいよ
もう行くのめんどうだし、眠いし…」

再度口から漏れ出る欠伸。
どれだけ寝ても寝足りない程眠い。
マーモンはさらに風へと密着をするように身を寄せる。

「あ、あの、マーモン?」

「ム、なにさ」

困ったような声色が自分の頭上から聞こえてきて、マーモンはチラリと視線を上へと向けると、風が少し頬を赤らめていた。

「その…くっついてくれるのは非常に嬉しいのですが…距離が近すぎでは?」

「そう?そんなことはないと思うけど…
それよりも、これじゃ少し寝辛い」

「え…ッ?!」

寝惚け眼で風を見つめた後にマーモンはぐっと体重をかけて風を押し倒した。
風は少し気を緩めていたのかそのまま押し倒されてしまい、驚いたようにマーモンを見上げる。

「マ、マーモン?!」

「…むむ…これで…ちょうど良さそう」

慌てて名前を呼ぶ風を他所にうとうととしながらぽつりとマーモンが呟くと、そのまま風の隣へとぽふっと横たわり、風を抱き枕にするように抱きついた。

「ん…いい感じ」

「…ッ…マーモン、あのですね…流石の私でもこれは…」

ふにゃりと柔らかな笑みを浮かべるマーモンを見て顔の赤みが増す風は、切羽詰まったようにマーモンの腰へと手を伸ばす。
すると、尻尾に手が触れてしまいマーモンはビクッと腰を跳ねさせた。

「んッ」

「あ、すいません!わざとではなくてですね!」

「…風…」  










眠い…眠い…寝たい…。









だけど、それよりも…。









「マ、マーモン…?」

風はマーモンのいつもの雰囲気とは違うのを感じ取り名前を呼ぶと、とろんとした表情で頬を赤らめているのに気付き、思わずドキッとしてしまう。
マーモンはゆっくりと顔を上げ、ゆらりと尻尾を揺らしながら風の頬へと手を伸ばして顔を近付けた。









「僕と一緒に、良いことしようか」









11/15ページ
スキ