嫌味な奴に一泡を
「...で...」
「...った...なら...」
「...」
何話してるんだろ...。
目が覚めたマーモンは瞳をうっすらと開けてぼーっとしながら聞こえてくる声に耳を傾け、顔をゆっくりと上げる。
「...おや?」
「目が覚めたようだな」
マーモンの様子に気付いたらしい二人は会話をやめてマーモンへと目を向ける。
「...むぅ」
上体を起こそうとするもまだ体が起きるのを拒んでいるのか中々思うように動かない。
マーモンはうつぶせのまま顔をこしごしと手でこする。
「まるで猫のようだな」
「まるで、ではなく猫なんですけどね
一時間経って起こしたのですが反応がなくて...二時間位寝ていましたかね」
壁にかけてある時計に目をやりながら風は立ち上がりマーモンの元へと行くとしゃがんで様子を伺う。
「...本当かい?ごめん...寝過ぎてしまったね」
「私は別に大丈夫ですよ
貴方も今日は任務がないようですし、よかったですね」
「スケジュールまで把握しているのか...恐ろしい奴だ」
「マーモンのこと全て把握しているつもりです
そうですねぇ...例えば」
「そんなもの聞いてもなにも役に立たないだろう
言わなくて結構だ」
「おや、残念です」
「ん...」
「マーモン、どうします?アジトまで送りますか?」
うとうととしながら風を見上げ、なんとか上体を起こして両手を伸ばす。
「どうしました?」
マーモンの行動の意図が分からず風は顔を近づけて首を傾げた。
「...抱っこ」
「...え?」
唐突に出されるマーモンの言葉に風はピシッと固まりマーモンをガン見し始める。
ヴェルデはその様子にプッと吹き出しながら眺めていた。
「え、あの...いいのですか?」
「...!!」
戸惑いながら抱こうとする風を見てマーモンは自分の言動に気付き、カァァと顔を真っ赤にし始める。
「あ、ごめ、ちがくて...最近、君がシャワーの時に抱っこするから…あの」
「...ふふッ」
慌てながら弁明するマーモンの言葉に風はにこにこと嬉しそうな笑顔を浮かべ、マーモンの言動を見守っている。
「仕方ありませんねぇ、いいですよマーモン
ほら、抱っこして差し上げましょう」
「い、いらない、自分で歩ける...ムギャッ!」
問答無用で風はマーモンを抱き抱え、くるりとヴェルデへと身体を向けた。
「ヴェルデ、また3日後でよろしいでしょうか」
「あぁ、その時には報告書も持ってきてくれると助かる」
「わかりました、その時も私がついてくるので大丈夫ですから」
「頼まなくてもどうせついてくるのだろう?」
「ふふっ、ばれてましたか
それでは、3日後にまた...」
「はぁぁなぁぁせぇぇ!!」
「気をつけて帰りたまえ」
暴れているマーモンを他所に二人は会話を終わらせると、風はそのまま研究所から出ていった。
「...奴等、本当にあれで付き合ってないのか?」
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