嫌味な奴に一泡を
「シャワー…水…あぁ、なるほど」
浴室で流れ続けるシャワーとマーモンの姿を交互に見て察したように風は呟いた。
「確かに猫は水苦手ですからね…こればかりは仕方がありません
シャワーを浴びないという選択肢は…」
「ま、前も言ったろ…肌弱いから汗かいたままだとすぐ荒れちゃう…」
「そうでしたね…ならばどうしたものか…」
「…」
風は少し考えながら事前にマーモンが用意していたであろうバスタオルをマーモンにとりあえずかけた。
私が暴れるマーモンを押さえつけながら、でもいいでしょうがそれはそれで可哀想ですし…なにより、私が耐えられるか…。
まぁ、そもそもマーモンが拒否をするでしょうがね。
「…風」
マーモンはバスタオルにくるまり、意を決したように風を不服そうな表情で見上げた。
「どうしました?」
「…き…君に頼むのは非常に嫌だけど…不服なんだけど…」
「すごい嫌そうですねぇ」
「…でも、ベルに頼むのも嫌だし…他の奴にも頼みづらいから…」
「…大丈夫ですよ、貴方の頼みであれば私はなんでも致します」
「うむ…」
少し驚きながらも優しく微笑みながらマーモンの頬を撫でると、気持ちよさそうに瞳を細めながらごろごろと喉が鳴る音が聞こえた。
「…ふッ…」
そこまで猫のようになるんですか…。
予想外の出来事に思わず吹き出してしまう。
「…どうしたの?」
「いえ…気にしないでください
それで、お願い事とは?」
「あぁ、そうだ…悪いんだけどさ…」
「…僕の体…洗ってくれる…?」
「…」
ピシッ。
「い、嫌ならやらなくていい!
君にそこまで甘えるのもどうかと思うし、第一君が僕に好意を向けているのをわかった上でこんなお願いするのは本当に嫌なんだけど!嫌なんだけど…他に手が思いつかないと言うか…
君なら力が強いから僕が暴れても押さえつけられるだろう?
君が嫌ならシャワー諦めるし、無理には…」
「…なにを言いますか、マーモン
もちろん引き受けるに決まってるではありませんか」
自分の顔を手で隠しながら恥ずかしげに言うマーモンを見て風はふっと柔らかな笑みを浮かべながら答えた。
「ほ、本当?」
「何者でもない貴方のお願いを私が拒否する訳ありませんよ
こうして貴方が頼ってくれること自体嬉しいですし」
「ふぉ…」
風の言葉に安心した表情を浮かべたマーモンは安堵の息を漏らしながら風を見上げたが、ピシッと固まってしまった。
「おや、どうしましたかマーモン?」
「いや、君…」
「鼻血、出てるけど…」
「…あぁ、失礼
ちょっと思わぬハプニング続きで脳が追いつかないのと興奮してしまい…」
「…君に頼むの失敗したかな…」
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