嫌味な奴に一泡を


「マーモン、おーきーろー」

「うむ...むむむ」

眠っていたマーモンは何者かに頬をつつかれる感覚で目を覚まし、頭を押さえながら上体を起こした。
どうやら、頬をつついていたのはベルだったらしくベルはマーモンの目が覚めたのを確認すると立ち上がった。

「おはよ、マーモン」

「おはよ...って、あれ僕いつの間に寝てたのか...」

昨日の夜の記憶が曖昧で思い出そうにも中々思い出せない。
チラリと時計に目をやると、朝の6時を指していて驚く。

「うっわ、本当にけっこう寝ていたな...」

「俺が昨日の夜にお前の部屋に入ったら部屋の中真っ暗でねんねしてたぜ?
珍しく鍵かけてなかったし、相当眠かったんじゃねーの?」

「...あぁ、なるほどね」

だんだんと目が覚めてきて昨夜のことを思い出してくる。

そうだ、確か僕ヴェルデと話してたら眠くなってきてそれが猫の...。

「なーなー、王子気になってたんだけどさ」

「なんだい?」

ベルはマーモンの腰辺りでゆらゆらと揺れている尻尾を指差した。

「それ、なぁに?」

「...」

厄介な奴にばれてしまった...。

にんまりと笑いながらしゃがんでベルは尻尾へと手を伸ばそうとする。マーモンはさっと尻尾を抱き締めるとベルから後ずさった。

「触らせろよ」

「嫌だよ、ここ敏感なんだからやめて
実は今治験中でね...その薬の効果が出てるのさ」

「ふーん、それで猫の尻尾...もしかしてさ、耳もついてるわけ?」

そう言いながらマーモンの許可なくフードへと手を伸ばしてバッと勢いよくフードを下ろす。頭にぴょこんと生えている猫耳を見て少し間を置いた後にベルは笑い出す。

「うっししし!マーモンその年で猫耳とかやべーね!」

「う、うるさいな...僕もまさかこんな効果だとは思わなかったんだよ」

「まぁ、でもいいんじゃね?
似合ってる似合ってる」

「絶対に馬鹿にしてるだろ、君」

「マーモンが猫ねぇ...へー...ふーん」

ニヤニヤとしながらなにやら企んでいるベルに思わず冷や汗が出てしまう。

「ほ、ほら...僕昨日シャワー浴びずに寝ちゃったから早く出ていってよ」

「へーへー、それじゃマーモン
またあとで遊ぼーな?」

大事そうに尻尾を抱えたままベルへと告げると、ベルはおとなしく部屋から出ていった。
あまりに素直に出ていったので"後が少し怖いな..."と思いながらマーモンはため息をつく。

とりあえずシャワー...また睡魔が来る前に色々済ませないとな。

ベッドから降りて自室の中にある浴室へと向かい、脱衣場で服を脱ぐ。
ふと、鏡に自分の姿が映りまじまじと今の姿を見た。

本当に尻尾と耳がついてる...触った感じも本物っぽいし。
ちゃんとヴェルデに説明聞いてから引き受ければよかったよ...まったく。

自分の警戒心の無さに呆れながら浴室に入りシャワーからお湯を出す。

「ムギャッ!!」

お湯が出て自分の身体にかかるとマーモンはビクッと身体を跳ねさせながら後ずさる。

えっ、な、なに...なんかシャワー怖いんだけど...。

そこでマーモンはハッとする。










あれ、猫ってお風呂とか苦手じゃなかったっけ...もしかして...。










「...シャワーどうしよ...」










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