嫌味な奴に一泡を


『そうか、もう症状が出てきたか』

マーモンはソファーに座りながら電話相手のヴェルデの声を聞く。

「これは一体なんなのさ」

『症状が出ているのなら分かるだろう』

「いや、わからないから
そもそもなんであの時説明しなかったんだ」

『聞かれなかったのでな』

「...それで、これはなに?」

これ以上問い詰めても無駄だと感じたマーモンはため息をつくと薬の効果について問いただした。

『この薬は、我々人類よりも優れた能力を持っている動物達からその能力を借りる薬...いわゆる、獣化だ
例えばそうだな...マーモン、貴様はいったいなんの動物になっている』

「うーんと...猫、かな」

ヴェルデに問われ自分に生えた耳を隣にいる風に手渡された手鏡で確認をした。
犬のような耳の形状ではないし、尻尾もそうだ。
猫であることは確かなのだろう。

『そうか、猫を引いてしまったか
とりあえず猫は視力、聴力、あと身体の柔らかさが優れている
それはわかるだろう
今、貴様の身体は猫のこの能力が主に使えるようになっているはずだ』

「...確かにさっきアジトに戻ってくるとき夜だったんだけど、いつもよりは見えやすかった気がする」

『だろう?現段階ではそこまで多くの能力を使えない試作段階なのだが...まぁ、そこは今後の課題だな』

「疑問があるんだけど」

『なんだ?』

「能力だけ借りるのであれば耳とかはいらなくないかい?」

『...貴様は馬鹿か?その動物の耳等の構造が優れている要因なのにそれがないのならばただの人間だろう』

「え、そういうもの...なのかな...」

『ところで、先程貴様は猫と言っていたな
悪いのだが、それはお前にとってはハズレだ』

「ハズレ?」

『話が戻るのだが、猫の特性等については簡単にはわかるだろう?』

「ふぁ...うん...理解はしてるつもりだけど」

...あれ...なんか、眠い...。
僕今日そんなに疲れた事したかな...。

マーモンは不意にやって来た睡魔にうとうととしながらころんとソファーに横たわる。

『実は今回、ランダムで犬と猫どちらかの能力を得られるようになっていてな
犬猫どちらも優れた能力を持っているのは確かなのだが、1つだけ違いがある』

「ちが...い...?」

『それは、睡眠時間の長さだ
犬よりも猫の方が少々睡眠時間が長いので任務をしている貴様には...』

「...」

『おい、聞こえているのか?』

スマホから聞こえてくるヴェルデの声を聞きながら、マーモンは瞳を閉じてすやすやと眠り出してしまった。
その様子を見ていた風はそっとマーモンの手に握られているスマホを手に取り電話を代わった。

「ヴェルデ」

『...その声は風か
おそらくいるかと思っていたが…どうやらその様子だとマーモンは』

「えぇ、眠ってしまいました
しかし安心してください、ヴァリアーのアジトなので」

『そうか、わかった
ならば1つ頼み事をしたいのだがいいだろうか』

「私に、ですか?」

ヴェルデの言葉に風は不思議に思いながら聞き返した。

「私にできる事ならば
それで、内容とは?」

『実はー...』










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