僕を好きな君と君が嫌いな僕


「マーモン...私は、貴方がバイパーであろうとマーモンであろうと関係ないのですよ
貴方という存在が好きなのですから
ですが...貴方があの日、私達が呪われバイパーを捨てたというのにいつまでもその名で呼ぶのは失礼でしたね、それは謝ります
ですから、私と結婚を...」

いつにもまして真剣な表情で、マーモンの手を握る力を強めながら告げてくる風。 


そんな風の言葉を僕は...。










心底嫌そうな表情で聞いていたと思う。










「...ねぇ」

「はい、なんでしょう?」

「君が僕のことをどう思おうがこの際置いておこう
だけど、君さ...」

マーモンは深いため息をつきながら風の手を振り払う。










「何度も言ってるよね?僕は君のことが嫌いだって」











そう、僕はこいつの事が嫌いだ。
ずっと昔から。











「え、話の流れからしてOKじゃないんですか?」

マーモンの言葉にきょとんとした表情を浮かべる風。

「そんなわけないだろう、僕は君のことが嫌いなんだから」

「二回も言わなくても」

「いいや、君のことだから何回も何百回も言わないとわからないだろうね
というか、僕もうそんくらい言ったはずなんだけど...過去の分も合わせて」

「愛情の裏返しと捉えてました」

「捉えるなよ、言葉の意味そのまま受けとれ」

「まぁまぁ、そうツンツンしないでください」

「ツンツンとか意味わからないこと言うな
ほら、早く出ていってよ...君が不法侵入したせいでここまで部下が確認しにくるかもしれないし」

相手にするの疲れてきた。

風の背中に回って押すもびくともしない。

え、なんでこいつ動かないの?石かなにかか?

「君重すぎじゃない?」

「え?まぁ、貴方への愛は重いかもしれませんが」

「そういう意味じゃない」

「そもそも、貴方の手に力が籠ってないんですよ」

「遠回しに非力って言うな」

「そこまでは言いませんが...少し失礼しますね」

風の言い方に少し苛つくとむっとした表情になってしまう。
そんな様子に困ったように微笑みながら断りを入れるとマーモンの方へと体を向けて先程まで背中を押していた両手に指を絡めて握ってくる。

「おい、離せよ」

「頑張って離してみてください」

「...チッ」

にこーと満面の笑みを浮かべながら風は告げ、マーモンはめんどくさそうに小さく舌打ちをする。

どうせこんなもの...。

そう思いながら自身の手に力を入れてグッと腕を引こうとするも動かない。

「は、ちょ、え」

「貴方は自分の超能力と幻術に頼りすぎて己の肉体を鍛えていませんからね
これでも私、力入れていないのですよ?」

「うむむむむ...ッ」

「ふふ、頑張っている姿も可愛らしいですねぇ
ほら、私の事が嫌いなのでしょう?
頑張って離してくださいね?
貴方が離すまで、私も離しませんから」

「き、君ね...説教しながらそういうこと言うのはいい度胸...っというか、早く君から離し」










バンッ。

「ふぁぁ...マーモン-、スクアーロから侵入者が来たとかでアジト内お前の術で探しー...あん?」

「あッ」

「おや、見つかってしまいましたね」










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