嫌味な奴に一泡を


「...」

「お帰りなさいマーモン、ごはんにしますか?それともおやつにしますか?
それとも...私にしますか?」

マーモンはヴェルデの研究室から立ち去った後、軽い任務をこなしてから夜にアジトへと戻ってきた。
自室へと入ると待ってましたと言わんばかりの笑顔で出迎える風。

「...」

もう慣れてしまったのかマーモンは何も言わずにパタンと扉を閉めて上着をかける。
なにも反応をしないマーモンを見るのもこちらも慣れているのか、風はテーブルの上にエクレアの乗った皿を置いた。

「今日のおやつはエクレアです
ですがもうこの時間ですからまたの機会に」

「...食べる」

ソファーへと腰掛けながらマーモンは置かれているエクレアをジッと見つめる。

...なんだろうか...さっきから身体に違和感があるんだよな...。
お尻のあたりと頭がむずむずするというか...なんか、変。

「どうしました?もしかして、どこか痛いのですか?」

普段ならすぐに手を出す甘いものをジッと見つめたままのマーモンを心配そうに顔を覗きこむ。
マーモンはチラリと風を横目で見た後にすぐにエクレアへと目を向けた。

「いや、なにも...頂くよ」

そう言いながらエクレアへと手を伸ばそうとした瞬間、風がマーモンの手首を掴んだ。

「なんだよ」

「いえ...貴方、今日動物でも触りましたか?
なにやらいつもと匂いが違うような...」

「いや、触ってないし合ってもないけど
君は犬かなにかかな?...って、近い近い」

風はマーモンへと身体を近づけるとスンスンッと匂いを嗅ぎ始める。
"そんな匂い変かな"と自分もスンッと匂いを嗅いでみるも特に変化は感じられない。

「そうですかねぇ...なにか違和感が...おや?」

"うーん"と唸りながらマーモンの全身を見つめ出す風はふと、マーモンのフードが少し盛り上がり、腰辺りがピクピクと動いているのに気付いた。

「マーモン、少しいいですか?」

「今度はな...ッ?!」

いきなりマーモンの背後に回り込むとバッとローブを勢いよく捲りあげる。
マーモンは突然の行動にビクッと身体を跳ねさせ固まってしまう。

「...これは...」

ローブを捲るとそこには白い毛に覆われた長い尻尾が目に入り、風はそっと尻尾に触れてみる。

これは動物の尻尾...猫のようですが...。

「あッ!!」

ですが、なぜマーモンの身体にこのようなものが...確か今日は任務があったはずですね。

「んぅ、ふ...ぁ...あ」

そこでもしかして誰かに...。

「あッ...あ~~ッ!」

「マーモン、貴方今日任務...ッ?!」

風が尻尾からようやくマーモンへと目を向けると、マーモンがへたりとソファーに横たわり頬を赤らめ声を漏らしながら悶えている姿が目にうつりピタッと動きを止めてしまう。

「ふ、ぉん...ッん...こ、れ触らない、で!」

「え...あ...す、すいません!」

息も絶え絶えに自分から生えている尻尾を守るように抱き締め出すマーモンの言葉にハッとして風は慌てて尻尾から手を離した。

「はぁ...ぁ...」

「...マーモン、すいませんが...念のためこちらも確認させてください」

やっと尻尾からの刺激から解放されてピクピクと震えているマーモンに思わずゴクリと唾を飲み込む。風は冷静を装いながらそっとマーモンのフードを捲ってみる。
すると、ピョンッと尻尾と同様の白い毛の猫耳が飛び出してきた。










...こ、これは...一体...。










「可愛すぎですか?」

「んぁ...馬鹿、言ってないで...どういう状況か説明、して」










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