最近俺の教育係がおかしい件
「…なるほどね、スクアーロにはバレてたわけか」
部屋へと向かう最中、スクアーロとの会話をあらかた説明されたマーモンは自室の扉を開きながらどこか納得したような反応を示した。
「スクアーロとかボスには気配バレてるんじゃないかなとは思ってたんだよね」
「流石No.1、2ですね
まぁ、私の場合貴方のように完璧に気配を消せないので仕方がないと言えば仕方がありませんが」
「こればかりは得意不得意があるから仕方ないよ
でもまぁ、来るのであれば今まで通りが…」
いや、なにを言っているんだ僕は。
マーモンが言いかけていた言葉をグッと飲み込み、口を抑えながら自室にある救急箱を手にしてソファーへと腰掛けた。
"来るのであれば"とか言ったけれど本来侵入するのがおかしいじゃないか。
そもそも、僕はまだそこらへん許可しているわけではないし。
そう、これはこいつが勝手に侵入して来ていること。
最近慣れすぎてだめだな、もっとしゃんとしないと。
「手当て、お手伝いしましょうか?」
救急箱を開けていると風が隣へと腰掛けながら声を掛ける。
風はマーモンの所々裂かれた服見えるワイヤーでついた傷を見ていた。
「あぁ、なら頼んでもいい?
多分消毒だけで済みそうだけど、包帯巻くとかだったら大変だし」
消毒液とコットンを渡した後、マーモンは着ていたローブを脱いだ。
中に着ていたシャツも裂かれ、微かに血が滲み出している様を見、"とりあえず脱がなきゃだめか…"と思っていると風がジッと見ていることに気付く。
「そんなに見られると脱ぎづらいんだけど」
「いえ…私の前で躊躇なく脱ぐようになったなと」
「君に裸も見られてるのに今更過ぎじゃない?
僕の意思ではなかったとは言えさ」
ボタンに手をかけて1つずつ外していくとふと風の様子が気になったのか目を向ける。
風は顔を両手で覆い隠し、自分の姿を見ないようにしていた。
「…なにしてるの」
「突然のご褒美ショットに動揺してしまい、拝んでいいのか漢としてここは冷静を保つべきか葛藤しているのです」
「そういう事言ってる時点で冷静じゃないことに気付け」
「あと、私が理性に耐えられるかどうか…」
「君、耐え性ないの?
そんな事言うならベルに頼むから無理には」
「いえ、やらせていただきます」
ベルの名前が出てくると風は目隠ししていた手を退かして消毒液とコットンを手に取った。
マーモンはその変わりようが面白く口元を少し緩ませた後、シャツを脱いでソファーの背もたれにのせる。
「そもそも、僕が怪我をした時に体拭いてくれたんだしもう慣れているだろう?」
「こればかりは慣れませんよ
愛する人の裸を見て3度目ですし…それに」
風はマーモンの露わになった上半身をチラリと見てゴクリと息を呑む。
「…」
「安心しなよ、君が勃起をしたところで僕はなんとも思わないから」
「あんまり言わないでください、興奮しますので」
「なんでもかんでも興奮材料じゃないか…
そんなことはいいからほら、早くして
足の方とかもやってほしいし」
上半身同様にズボンにも切り傷があり、それを教えるように指を指す。
「…殺傷能力が高いッ!」
「ッ!?」
風が珍しく大きな声を出しマーモンは思わずビクッと体を震わせてしまう。
「ね、ベルのやつ本当手加減してほしいものだよ」
「違いますそうではなくて…本当に目に悪いので一旦隠してください」
「え、あ…うん?ごめん?」
額に手を当てて少し困ったような風にマーモンは意味がわからずに謝りながらソッと足を風から遠ざけた。
そんなに見るに堪えなかったか…傷深くはないんだけど。
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