最近俺の教育係がおかしい件


「はぁ…た、助かった…」

数分後、風の力も借りてやっとの思いでワイヤーから解放されたマーモンは疲れたように壁に寄りかかって座り込んでいた。

「マーモンがちゃんと避ければこんな大変な思いしなかったんだけど?」

「元は君がワイヤーナイフなんて使うからだろう?」

「…それで」

ベルは自分達の様子を壁によりかかりながら見ている風へと顔を向けた。

「なんで中華野郎がいるわけ?」

少し不機嫌そうな声色のベルを気にすることなく風はにこりと微笑んだ。

「マーモンに用がありまして」 

「まぁたアルコバレーノ云々かよ
でも、今日はマーモンは王子の貸し切りなんだから帰れよ」

そう言いながらベルはマーモンの隣に腰掛けて肩を抱く。
その様を風は変わらずににこにこしながら見ていた。

「お、おいベル」

「そうはいきませんねぇ
本日は急ぎでの言伝を預かっていますので
マーモンをこちらに引き渡して頂きましょうか」

「…」

「…」

…なんだ、この雰囲気は。

ベルと風の間の険悪な雰囲気にマーモンは困ったように2人を交互に見た。

二人共仲良くしろ、とまでは言わないけどまさかこんなに相性が悪いとは思わなかったな…。
まぁ、ほぼ会話は初めてだから仕方がないと言えば仕方がないか。

「マーモンは当然、あいつよりも王子だよな?」

考えているとベルの顔がズイッと近づいてきて驚いて少し後ずさってしまう。

「いや…えっと…」

マーモンが言葉に迷いながら風をチラリと見てみると、"ん?"と首を傾げながら微笑んでいる。

今日はベルと一緒にいるって約束したし…だけど…。









…。











「…ベル、先に少し部屋に戻ってくれる?」

少し黙り込んで考えた後、マーモンはベルの頭にそっと手を伸ばし優しく撫でながら声をかけた。
ベルは撫でられたことに驚いたのか視線がマーモンへと向けられる。
そして、すぐに不満そうに唇を尖らせた。

「…王子よりもこいつとんのかよ」

「そうじゃないよ、今日は君と一緒にいるって約束したしね
でも、リボーンからの伝言は聞いておかないと後々めんどうになるし
ベルが思っている以上にあいつはめんどうだから
そうだな…30分くらいで話終わらせるからさ
君の部屋で待っててくれる?」

「…言ったな?マーモン言ったかんな?」

しばらくマーモンを見つめていたベルだったがぽつりと言った後に立ち上がる。

「うん、言ったよ」

「ならいーや、王子部屋で待ってるから
1秒でも過ぎたらお前の通帳切り刻んでやる」

「僕のこと殺す気?」

ひらりと手を振りながらベルは歩き出し、チラリと風のことを一瞥した。

「大丈夫ですよ、ちゃんとお時間は守りますから」

「…ふぅん
んじゃ、早めに来いよマーモン」

「はいはい」

パタンと訓練場の扉が閉められ、案外素直にベルが戻ったことに安堵をしていると風がスッと近付いてくる。
マーモンはそれを横目で見ながらゆっくりと立ち上がった。

「今日は来る日だったっけ」

「ですね、お休みのときは極力来るようにしているので」

「…まぁ、その件に関してはいいや
だけど、他の奴といるときに来るのはルール違反じゃないかな」

少し睨みつけるような眼差しで見ると、気付いたのか少しシュンとなる風。

「…すいません、我慢が出来なくて」

「我慢って、君ね
ベルの事をそんな目の敵かのように」

「だって明らかに貴方に好意がある感じではないですか」

少し気まずそうに風はマーモンから視線をそらす。
その様子を小さく息を漏らしながら横を通り過ぎ扉へと手をかける。

「君はまた…それよりも、僕の部屋で話そ
ここだと部下も来るだろうし、大体君が目立ってアジト内をふらつくのはよくないから」

「あ、その件に関しては安心してください
スクアーロから許可を貰いましたので」

「…スクアーロが?」

スクアーロの名前が出てきて驚きながら振り向くと、風は頬に手を当てながら嬉しそうに微笑んでいた。

「あと結婚の許可も」

「結婚…は、え、どういうこと?」










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