最近俺の教育係がおかしい件


「そんで、この前なにがあったんだよ」

「…そんなに気になるものなのかい?」

再びソファーへと座り直してベルが問いかけると、マーモンはめんどくさそうに答えた。

「だってお前のさっきの反応見たらなんかしらあったと思うじゃん」

「いやまぁ…別にそんなに大したことじゃないよ
この前はアルコバレーノの集会があって、お酒飲まされて潰されたから帰ってこれなかっただけ」

「うっわ、マーモン未成年なのにお酒飲んでだめなんだー」

「未成年じゃないって言ってるだろう、馬鹿ベル
君よりもうんと年上のお兄さんなんだけど」

「うししッ、それに見合った見た目してねぇから分からねぇって
ほら見ろよ、お前俺よりもちっせぇじゃん」

馬鹿にするような口振りで自分とマーモンの身長差を比べるように手で頭の上を動かす。
マーモンはむっとした表情を浮かべながらその手を掴んだ。

「君ね…構ってあげるのやめようか?」

「お前に拒否権ねぇよ、王子の言う事はぜーったい」

「…まったく、困ったわがまま王子だな
構ってあげるのはいいけど、出掛けなくていいの?
この前買い物付き合えーって言ってたような記憶あるんだけどさ」

「あ?ん、んー…」

ベルは少し考える素振りを見せながらチラリとマーモンに視線を向ける。
その視線に気付いたのか"なに?"とマーモンは首をかしげた。

「…うししッ、今日はいーや
別に出かける用事もねーし?アジトん中で暇つぶししようぜ」

「ムム、意外だな…君のことだから僕のことを振り回すのかと思っていたよ」  

「お望みなら振り回してやってもいーけど?」

からかい混じりに言うマーモンにベルははにかみながらナイフを見せつける。

「振り回す、というかそれ切り刻むだよね」

「どっちも一緒じゃね?」

「一緒じゃないよ…まったく」

「!」

相変わらずのベルの様子に呆れたような表情を浮かべマーモンはポフッとベルへと寄りかかった。
その様子にベルは少し驚いた後、嬉しそうに笑う。

「なんだよマーモン、甘えんぼ?」

「違うよ、最近色々とあって構ってあげられなかったから甘えさせてあげてるのさ」

「ししッ、なんだそれ
でもお前がそーやってくっついてくんの珍しくね?」

「ムムム…うぅん…そうかな…」

「そうそう、お前人に触られるのあんま好きじゃねぇし
まぁ、俺はお構いなしに赤ん坊の頃とか抱っこしてたけど」

マーモンが赤ん坊の頃を思い出してみると、自分が抱っこしてる時も少し嫌そうにしていたが大人しく抱かれていた。
だんだんと慣れてきたのか諦めたのか定かではないが、そのうち自分から肩に乗ってきたりもしていた気がする。

「君には何度言っても効かないから諦めて、逆に乗り物として利用していたまでだよ」

「王子のこと乗り物扱いとかお前何様?」

「君の教育係」

「生意気」

ナイフの持ち手でつんつんとマーモンの頬をつつくと、"刺さりそうで怖いから"と止められてしまう。

「…まぁ、確かに君の言う通り…触られるのはあまり好きじゃなかったよ
それは今も変わらないし」

「ほぉん、ならなんで王子にくっついてんの?」

「さっきも言ったろう?君を甘やかせてあげてるだけ
あとは…うん…ちょっと…」

「ん?」

マーモンは少し言いづらそうに口ごもった後にスッとベルから視線をそらす。

「…僕も呪い解けて余裕出てきたし…少しは他人と触れ合ってみようかなって」

「…マーモン」

ベルは驚き目を見開いた後にマーモンの頬へとスッと手を伸ばして両頬を手で包みこんだ。

「お、おい…なんだよ」

「…お前…」










「体調わりぃの?」

「…滅多なこと言うからってそういう反応はないと思うんだけど」

  








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