不明瞭な気持ちで
「待て待て待て!だからってなんでこうなるんだよ!」
突然"触れ合って慣れましょう?"と言われ意味もわからずに固まっていると抱き上げられてそのままマーモンはベッドルームへと連れて行かれた。
大きなキングサイズのベッドが1つしかなく、その上に優しく降ろされたマーモンは壁際へと逃げるように風から後退った。
「何もしないって言ってたじゃん!」
「えぇ、だから今日はえっちな事はしません」
「えっ…その言い方やめろよ、なんか君が言うと厭らしい!」
「貴方も先ほど言っていたではないですか」
ソッとベッドの上へと乗りジリジリとマーモンを追い込んでいく風。
マーモンは壁際でジッと風を見上げながら警戒をしている。
「さて、マーモン」
「ッ…」
マーモンの目の前へと辿り着くとトンッと軽く肩を押してそのまま倒れさせ、その上へと覆い被さる。
「覚悟はよろしいですね?」
「か、くごって…いや、本当に無理だから!
そもそも、同意の上じゃないんだけどッ」
「安心してください、優しくしますので」
「なにも安心できな…!」
ドサッ。
「…え?」
風はマーモンの隣へと横になると優しくマーモンを抱き寄せる。
思っていた展開と違う状況にマーモンはきょとんとした表情を浮かべて風を見上げた。
「こうやって私と触れあえば、慣れてくださるかなと」
「…ッ…」
これじゃ、僕が変態みたいじゃないか…。
あっけらかんと言う風の言葉を聞き、自分が勘違いをしていることに気付いたマーモンは風から顔を隠すように胸板に顔を押し付けた。
「どうしましたか?」
「いや…数秒前の自分を殴りたいだけ…」
「…ふふッ、もしかして…襲われると思いましたか?」
「ッ!そりゃ…思ってしまうだろう…?」
小さく微笑みながら問いかけられ、マーモンは目を軽く見開いた後にポツリと小さな声で呟いた。
「普段とは違う感じで迫ってくるし、上半身裸だし」
「あ、すいません
いつも寝る時は上は着ないので
気になるのであれば着ますが」
「それに」
「それに?」
「…」
そこでマーモンの言葉は詰まってしまい次が出てこない。
その様子に風は頭へと手を伸ばして優しくなで始めた。
「ムム…」
頭を撫でられ、少し気持ちよさそうに瞳を細める姿がまるで猫のように感じ風は思わず笑みを零してしまう。
「それに、なんですか?」
「…ベッドの上で…迫られちゃ…そう勘違いしても仕方がないじゃないか…
心臓に悪いから、やめてほしいんだけど」
恥ずかしげな表情を浮かべながら告げるとマーモンはサッと再び胸板に顔を隠した。
「…はぁぁ」
「ッムム…なんだよ
どうせ僕は君みたいに経験ないさ…」
風はマーモンの首筋に顔を埋めてため息をついた。
それに驚いたマーモンは自虐混じりにぶつぶつと呟く。
「マーモン、あまりそう煽らないでくださいよ…」
「煽…ってなんてないんだけど」
「私だって本当は貴方のことをぐずぐずに甘やかし、めいいっぱい犯したいのですから」
「は…な、なにを言っ……」
風から発せられる言葉に驚いていると抱き締める力が強められギラリと獣のような瞳で見つめられ、マーモンはビクッと体を跳ねさせる。
「水族館に来たときに貴方が私の服を着た姿を見た瞬間から、今日ずっと理性を保てるか不安で仕方がなかったんですよ」
「ッ…ちょ…」
耳元で低く呟かれ、マーモンはゾクリと背筋が震えてしまう。
「普段、晒されていない貴方の綺麗な足が他人の目に触れられるのは嫌でしたねぇ…
貴方は気付いていないようでしたが、他の男がどれだけ厭らしい目つきで見ていたか…分かりますか?」
抱き締めていた手をスッと体のラインをなぞるように下へと下げていく。
マーモンはくすぐったさから身じろぎをし、風の腕を弱々しく掴んだ。
「ふ…ッ…く、くすぐった…」
「まぁ、今はこの場所に私と貴方のみなので存分に独り占めが出来ますが」
太ももをツーッと指で触れられ、ズボンの裾から指が入ってくる。
「ッぐ…ぅ」
「このパジャマもお似合いですよ、マーモン?
普段ももう少し足を出してもいいのでは?
ああ、でも、そうなると他の方に見られてしまうので…悩ましいですねぇ」
「ふッ、ぉ」
「今日一日、下心を抱えている私を他所に貴方は私を警戒、はしていたでしょうが愛らしく名前を呼びながら私に応じて…私に触れ…そして、私の不安な心を解消してくれた…」
「ッ!」
ズボンから手が抜かれ少し安心をしていると今度は腹部を撫でられ、そのまま上半身に指を這わせ始める。
「…マーモン」
「我慢した私を、褒めてください?」
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