不明瞭な気持ちで
「…やっぱり、髪が長いと乾かすのは時間かかるね」
ドライヤーの電源を切り、乾かし終えた風の髪を指で漉きながらマーモンは呟いた。
「すいません、大変でしたか?」
「まぁね、でも普段人の髪とか乾かさないから新鮮だったかな」
"あげる"とドライヤーを風へと手渡し、ソファーの前へと移動をするとポフッと隣に腰掛ける。
風は受け取ったドライヤーをテーブルの上へと置いた。
「私も普段乾かすことはしないのですが、たまにはいいですね」
「え、普段乾かさないの?」
「えぇ、面倒なので自然乾燥です」
「…僕の努力を返せ」
「貴方がしてくれると言ったではありませんか
またこうして貴方とお泊りする時はお願いしましょうか」
「そんな寝言はいいから早く着替えちょうだいよ
流石にいつまでもバスローブでいるのは落ち着かないんだけど」
「…」
モゾッと足を動かす様子を風はジッと見つめ、バスローブの裾を掴んでペラッと捲り上げた。
「!」
「あぁ、本当に下着着けていなかったのですね
確かにマーモンは全身ずぶ濡れでしたし無理はな」
突然の行動に驚いたマーモンはピシッと動きを止めるも、わなわなと震えた後に風の頭に向けて手刀を振り下ろした。
が、風はそれに目も向けずに手刀を手で塞ぎ指を絡めて握りしめた。
「何をするんですか」
「こっちの台詞だよ、サラッと何してるんだ変態」
「いえ、なにも身に着けていないのか確かめるために」
「君が用意してなかったからなにも着けてないに決まっているだろう?
見えちゃったらどうするのさ」
「先ほど入浴時に見てしまったのですからいいじゃないですか」
「僕腰にタオルまいてたから大事なものは見せてないよ、馬鹿」
「そうですが…まぁ、もし見えてしまったとしてもこの場合は不可抗力といいますか…仕方がないといいますか」
「なんで満更でもなさそうなんだよ、というか手握るな離せ」
「いやです、貴方に触れたいです」
「さっきから触ってばかりじゃないかッむぎゃ!」
風の手から逃れようとグッと力を入れるもびくともせず、風も微動だにしない。
それどころか、風はグンッと軽く引き寄せるとマーモンはそのまま風の腕の中へと収められてしまった。
「お、前調子に乗るのもいい加減にッ…」
「ほら、これも修行の一環だと思って私の腕から逃れてみてください」
「やだよ、さっきお風呂入ったのに汗かくじゃないか」
「え?この程度で汗を?」
「は?」
イラッ。
風の中では煽ったつもりはないのだろうが、マーモンはピキッと額に青筋を立てる。
こいつ…本当に…ッ!
「…いいよ、やってやるよ…
いつまでも僕を馬鹿にすると痛い目に合うこと、今思い知らせてやる…!」
自分を拘束している風の腕を掴みググッと力を込めて離れさせようとする。
風は自分の提案にのった(?)マーモンを見て応援するかのように声をかけた。
「そうです、その意気です!
もっと腰に力を入れて…!」
「ムムムムムムッ…!」
-数分後-
「ッは…ぁ…」
マーモンはぐったりと体の力を抜かし、風の太ももに自分の体を預けた。
「おや、もうおしまいですか?」
「…この、馬鹿力め…」
「この程度で音を上げるとは…これは毎日行わないと筋肉がつかないかもしれませんね」
「術士である僕に筋肉なんていらない…
というか、離して…君体温高すぎて暑いんだけど…」
「私、代謝もいいのでそれでかもしれま…」
風の体温が移ってしまいマーモンの体に熱が籠もる。
風はマーモンを抱きしめる力を弱めながら様子を見ると体温が上がりうっすらと額に汗を浮かばせ、頬が微かに紅く染められていた。
先程まで動いていたせいか、バスローブの肩と裾がはだけており素肌が見えてしまっている。
それを見た風はピシッと体を石のように固まらせ、言葉を止めた。
これは…。
「ねぇ、聞いてる?」
マーモンの声にハッとし、見上げられている事に気付いた風。
風は一瞬手を離そうとしたがその手の動きを止めて再度マーモンを抱きしめる。
「ムムッ…ねぇ、離してって」
「…すいませんマーモン」
「?」
「あと少しだけこのまま…すぐに収めますので」
「は?」
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