不明瞭な気持ちで
「は…くしゅッ」
思考を巡らせていると少し寒気がしてそのままくしゃみをしてしまう。
「あぁ、体冷えてしまいましたよね…
先にシャワー…じゃ、暖まりませんよね
浴槽にお湯張ってありますのでお先にどうぞ?」
マーモンのくしゃみに風は自分が使っていたバスタオルを肩へとかけ、"少し濡れていますが"と一声添える。
「…ずいぶんと準備がいいね」
「水族館を出る際に連絡しておいたのですよ
貴方の体が冷えてしまい、体調を崩しては大変ですので」
「そう、それならお言葉に甘え…」
風の好意に甘えようと横を通り過ぎようとするも、ふと風の方へと視線を向ける。
ある程度は渇いているとはいえ、風の服も濡れたままでおり自分と条件が変わらないことに気付いた。
「君、先に入りなよ」
「はい?」
「君だって濡れてるんだし
それに、ここの部屋を取ったのも君なんだから君が先に入る権利あると思うんだけど」
「いえ、私はこの程度…修行で慣れておりますし」
どんな修行してるんだよ。
「それに、私は体が丈夫ですが貴方は違うでしょう?
私とは違い、体力もありませんしその体ではすぐに体調を崩してしまいます」
「は?」
悪気もなく親切心のつもりの風の言葉にカチンときてしまい、マーモンは表情を引きつらせる。
こいつ、本当に無自覚に人の神経逆なでする癖直ってないな…ッ!
「僕も大丈夫ッくしゅ!」
「なぜそこで意地を張るのですか
ほら、早くお風呂に」
「い、いやここで折れたら負けた気がする」
「負けず嫌いを今発揮させないでください
…ですが、貴方もこれでは納得しないのも確かでしょうね」
微かに身体を震わせくしゃみをするマーモンを見て風はどうしたものかと考えた後、なにやら思いついたのか口元に小さく笑みを浮かべた。
「それではマーモン」
「む…なんだよ、先に入る気になった?」
「一緒に入りましょうか」
「…は?」
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