純粋な気持ちで
「ッはあ…すごかったね」
ショーが終わり、会場を出たマーモンは伸びをしながら言う。
「確かにすごかったですねぇ…水が」
マーモンの横を歩きながら前髪から垂れてくる水滴を退けようと風は前髪をかきあげる。
「しかし、これどうしようか
これじゃ、帰るにも帰れないな」
自分の衣服のびしょ濡れさに若干引きながら笑っていると、風が"大丈夫ですよ"と返事をした。
「大丈夫って?
着替えでも持ってきてるの?」
「そうですね
そもそも、今日はアジトに帰るつもりはありませんし」
「ふぅん、アジトに帰らないなら…ん?」
今、アジトに帰らないって言った?
「ねぇ、今アジトに帰らないって聞こえたんだけど」
自分の聞いた言葉が聞き間違いじゃないかと思い、風に再度確認をする。
「えぇ、帰りませんよ
ここの近くのホテル予約してありますので
ほら、貴方と待ち合わせしていた所がそうです」
「は…」
「ついでにそこに着替えがありますから
事前に荷物だけ運んでいたんですよ
まぁ、まさかここまで濡れるとは思っていませんでしたが」
「ちょ…ちょっと待って
水族館に行って終わりじゃないの?」
「…あれ、言ってませんでしたっけ?」
ひしっと風の服の裾を掴み片手で自分の頭を抑えながら声を振り絞るように問いかけると、風はきょとんとしながら首を傾げた。
「いや、水族館に行きましょ、しか言ってないんだけど
それに、さっき帰るって」
「そうですね
水族館(に言ってお泊り)デートしましょうと
そして(ホテルに)帰りましょうって言いました」
「その重要な()の部分が聞けてないんだけど…!」
「それに、私水族館入る前に"お部屋で触りますね"って言ってましたし」
「それはアジトの僕の部屋かと…いや、触らせないけどね?」
「まぁまぁ、いいではないですか
明日もお休みなんですし、たまには」
「あ、ちょ、おい!」
風はご機嫌な様子でマーモンの手を握るとそのまま水族館の出口へと向かって行く。
マーモンは納得いかずに制止するも風は止まることがない。
「話を聞けぇぇぇ!!」
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