純粋な気持ちで
「…」
どうしてこうなってしまったんだろう。
マーモンは目の前を行き交う人達をボーッと眺めながら自身が今の状況に陥った原因を振り返る。
風に水族館に誘われて2時間…。
なぜだか知らないけれど別々に行くことになって僕が先に着いてしまった。
こういう時って大概風のほうが早く着いていそうなんだけど珍しいな…迷子か?
…というか…。
なんなんだろう、この服は。
大きめのサイズのパーカーにショートパンツを履いた自身の姿が目の前の店のショーケースに映し出され首を傾げた。
風に"この服で来てください"って言われて手渡されたやつそのまま着てみたけど…いいのか、これ。
僕男なんだけどこんな格好して捕まらないか?
足さらけ出すとか…こういうのってタイツ?とか履くものじゃないの?
さっきからチラチラと視線があるし、通報されるのも時間の問題だな。
パーカーは大きめサイズだからありがたいけど…。
「マーモン」
マーモンがうーんと唸りながら考え込んでいると、ふと自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、風が呼んだことを察した。
「君ね、自分から呼んでおいて遅…ぃ…」
バッと顔を上げて文句を言ってやろうと意気込みマーモンだったが、周りを見渡しても風の姿がない。
あれ、さっき声が聞こえたんだけど…。
キョロキョロと周りを見渡してみるもやはりいない。
いつものチャイナ服がいない…なのに声が聞こえたのは…。
「マーモン、こちらですよ」
「!!」
ひょこっと顔を突然覗き込まれてマーモン葉思わず後ずさる。
顔を見てみれば確かに風がその場にいる…いるんだけれど…。
「えっと…どちら様?」
普段のチャイナ服とは違い、普通の青年のような格好の風にマーモンは敬語で話しかける。
「どちら様って、風ですよ」
困ったような笑みを浮かべながら頬をかく風をマーモンは呆然と見つめてしまう。
…服でこんなに第一印象変わるもんなんだなぁ。
まぁ、もともと顔は整ってる方なのはわかっていたけど洋服になるとイケメン具合が変わってくる。
リボーンとはまた違うな、正反対。
あと服。
チャイナ服って結構ゆったりとしてるから体のシルエットがわからないけど流石格闘家。筋肉すごいな…腕太い。
…。
「あの、マーモン」
ジッと風の身体を眺めていると恥ずかしそうに声をかけてきた。
「なに?」
「いえ、そんなに見られると流石に照れてしまいます」
「あぁ、ごめん
君、洋服も案外似合うね
たまには着ればいいのに」
「ふふ、ありがとうございます
しかし、あまり着慣れていないので少々落ち着きませんね
あと、動きづらいですし」
「ふぅん…まぁ、普段の格好のほうが見慣れてるしそっちのがいいか」
「…」
「…なにさ」
今度は風からの視線を感じ、問いかけるとなにやら嬉しそうな表情を浮かべている。
「いえ、私の選んだ服を着てくれたんだなと」
「押し付けてきたのはどこの誰だよ…まぁ、僕出掛け着とか持ってなかったから仕方なくね」
「よく似合っていますよ、私の思ったとおりです」
「それはどうも…でも、足を出すのはどうかと思うんだけど
男である僕が足を出すとか…」
「とんでもありません、すごく似合っています!」
ズイッと興奮したようにマーモンへと顔を近づける風。
その様子に"そ、そう…"と少し引きながら返事をした。
「ですが…やはり貴方はもっと食べたほうがいいのではないでしょうか?
このくらいのサイズで大丈夫かと思いましたが、少し緩そうですねぇ」
「…ムム」
足をジッと見ていたかと思うと段々と視線を上げていき腰回りへと視線を移動させながらそっとマーモンの腰へと触れる。
「あ、やはりウエスト余裕が…というかよくずり落ちませんね」
「…ねぇ」
「はい?なんですか?」
「…外で、あんまりそういうふうに触るのやめてくれる?」
まわりから視線を感じ、風に静止の声をかけ片手で顔を覆い隠していると、風はキョトンとした表情でしばらくマーモンを見たあとにハッとして手を離した。
「す、すいません…お部屋で触りますね?」
「触ること許可した覚えはないよ、馬鹿」
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