純粋な気持ちで


「マーモン、水族館行きましょう!」

「…は?」

何を言ってるんだ、こいつは。

いつものように唐突に窓から侵入をしてくる風の言葉にマーモンは理解ができずに間抜けな声を漏らした。

「今日は休みですよね?」

「いやまぁ、そうだけど…2日間休みだからアジトで寝てようかなと」

「おや、それはいい心がけですね
前回の反省を活かしているようでなによりです
あ、今日はクッキーシューとやらを購入してきましたが食べますか?」

"キッチン借りますね"と慣れた手つきの様子を見ながらマーモンは諦めたように息を吐いてソファーに腰掛けた。

「はい、どうぞ」

数分後、目の前のテーブルにお皿の上に乗せられたクッキー生地が乗せられたシュークリームが置かれ、レモネードの入ったグラスも共に乗せられる。

「ムム、これは食べたことないな…」

「ふふ、貴方が食べたことのないものを買ってきましたからね」

「そこまで把握されてるの本当に気持ち悪い」

手にとって一口齧るとザクッとした食感の後にとろりとカスタードクリームが溢れ出る。
普段とは違うシュークリームの食感と味わいにマーモンは驚いたように目を見開く。

「ンムム…」

「どうです?」

「おいひい…けど、溢れそ…あ」

齧った箇所から口を離すと中のクリームが溢れそうになり、マーモンは慌てて再度クリームを舐める。

「おや…食べづらかったですか」  

「ん…でも美味しいから問題ない…」

「それならばよかったです
買ってきたかいがありましたよ」

もぐもぐと咀嚼をし、コクンと飲み込むとマーモンは"それで"と風へと向き直った。

「水族館いきましょう、とか聞こえたんだけど」

「あ、そうです水族館
水族館に行きましょう!」

ハッと思い出したような表情を浮かべ、風は何処からともなく水族館のパンフレットを手にしてマーモンの隣へと座った。

「ちょ、近い
君魚とか好きなの?」

「え、いえ特にそういうわけでは」

「は、ならなんで?行く意味あるの?」

「ありますよ、大アリです」

風はにっこりと微笑みながらマーモンへと顔を近付けた。










「貴方とデートがしたいだけです」

「…デート…?」










1/10ページ
スキ