僕を好きな君と君が嫌いな僕


「...と、いうわけで任務は成功したから」

アジトへと帰還したマーモンとベルは共にスクアーロに任務の報告に向かった。
淡々と任務の全容を話終えると、スクアーロは見ていた資料からマーモン達へと目を移す。

「...お"ぉ、ごくろうさん
んなことよりも、お前らなんでそんなにボロボロなんだぁ
今回の任務、お前らには難しいもんじゃかったはずだぜぇ?」

お互いに切り傷や服の乱れがある二人を交互に見た後、スクアーロは訝しげな表情を浮かべながら問いかける。

「僕らが手こずるわけないだろう?これは」

「マーモンにちびちび貧乏人って言ったらいきなり攻撃してくるから王子は自己防衛しただけ」

「元はと言えば君が余計なことを言わなければよかったのさ
それなのに、やれ貧乏人ならちびやらと」

「俺は事実を言ったまでだけど?」

スクアーロからベルへと顔を向けると、"んべ"と舌を出している。
マーモンは小さく息を吐くと体ごとベルに向けてギロリと鋭い睨みを向けた。

「...どうやら、君にはもっときついお灸を添えなきゃいけないようだね」

「うししッ、マーモンのお灸とかたかが知れてるっての
体おっきくなっても短気なとこはかわんねーのな」

「...」

「やんの?」

睨み続けながらすっとローブの中から片手を出すと、ベルも動きに合わせて片手にナイフを携える。
どちらかが動けば、戦闘は間逃れない。

「ここでやろうとするんじゃねぇ!」

ガツンッ!

「いッ!」

「~~ッ!」

"ゴチンッ!"と鈍い音が鳴ると同時に頭に重い痛みが走った。
マーモンが痛みから声が発せずに頭を抑えてしゃがみこんでいると、ベルは声を上げながらスクアーロを睨み付けている。
どうやら、二人を止めるためにスクアーロが頭に拳骨を食らわせたらしい。

「王子に拳骨とかあり得ねぇんだけど!」

「うるせぇ!お前らがびーびーびーびー喚いてるからだろがぁ!
任務失敗してねぇのはいいが、部下の前で恥さらす真似してんじゃねぇぞ!
マーモン、てめぇもだからなぁ!」

ベルに怒鳴り付けた後、スクアーロはビシッとマーモンを指差した。

「本来の姿に戻ったからって浮かれて失敗でもしてみろぉ!いくらてめぇでも」

「いたた...わかってるよスクアーロ」

言葉を遮るように未だにジンジンと痛む頭を擦りながら立ち上がる。

「ヴァリアーでの任務の失敗=死、だからね
それに、ボスの面子もあるんだ
命の恩人、は言い過ぎかもしれないけどそんなボスの面汚しなんかしないよ」

"あとこれ"と先程の任務で取ってきたものをポケットから出してスクアーロのデスクへと置く。

「これ、今回潰したマフィアの内部データ
もしかしたら他のファミリーの情報入ってるかも」

「...これは預かっとくぜぇ」

スクアーロはジッと出されたものを見つめると、それに手を伸ばして懐に納める。

「報告は以上だから部屋に戻るとするよ
どこぞの王子のせいでもう朝になっちゃってるし」

頭の痛みが小さくなり、ふと窓に目を向けると朝日が入り込んでいた。
その光景を見ると不意に眠気が襲ってきて"ふわ"と小さく欠伸を漏らす。 

「いつまで引きずってんだよ、お前ほんとに」

マーモンの言葉に少し呆れたような表情を浮かべているベルを横目に見た後、部屋から出ようと扉に向かって歩いていく。

「あ、そうそうスクアーロ」

「あ"?なんだぁ」

大事なことを忘れていた。

ドアノブに手をかけたところで思い出しスクアーロに再び顔を向けると、デスクに置いてある資料の山へと手を伸ばしていた。










「情報提供もしたんだから報酬、弾んでよね」










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