いつまで経っても慣れなくて
「ごめん、遅くなって」
保留ボタンに手をかざし、"ふー…"と己の気持ちを落ち着かせるかのように息を吐き出した後、ボタンを押して再びスマホを耳へと当てて待っているであろうスクアーロへと声をかけた。
『ずいぶんと遅かったじゃねぇか、なんかあったか?』
「いや、そんな大したことじゃないから気にしないで
さっきの任務なんだけど、こっちに来ている人数は把握出来ているのかい?」
『あぁ、現時点の情報だと2人らしい』
「2人…その位なら時間はかからなそうだね
生死の有無は?」
『別に問わねぇ、お前のほうで処理は頼む
今日、沢田綱吉は平日で学校に行ってるらしいからバレずにやれよ』
「あぁ、そっか…今日は平日なんだね…
それなら、潜入した方が手っ取り早いか
どうせお目当ては沢田綱吉なんだし」
『やり方はお前に任せる
わりぃな、いきなり頼んじまって』
「別にいいさ、その代わり、ちゃんと報酬は貰うから
休日手当付きでね」
『そこは分かってらぁ
電話終わったら、暗殺者の情報等送るから確認してくれ』
「うん、ありがと…じゃあね」
スクアーロとの会話を終えて、マーモンはスマホの通話終了ボタンを押して一息つく。
すると、再びスマホから音が鳴り確認をしてみると、スクアーロが先ほど離していた暗殺者の情報が送られてきていた。
…なんだ、2人だけというから結構な手練れかと思っていたけれど…名前も聞いたことないし、特に大したことはなさそうだ。
これなら、すぐに済ませて風とデートを…。
「…あッ」
…いけないいけない。任務なんだから、集中しないと。
風とのデートの事を想像してしまい、マーモンはハッとして顔をぶんぶんと横に振り深く息を吐いた。
…そういえば、この事はボンゴレ側に連絡してあるんだろうか。
もししているのであれば、リボーンに一声かけておいた方がいいのかもしれない。
スクアーロに確認しようにも、もう夜中だし、さっき連絡して眠ってしまったかも。
「マーモン」
寝室の扉が開く音と同時に風が自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、マーモンは顔をそちらへと向ける。
すると、着替えを済ませたのか風がいつもの中華服に着替えており自分の元へと歩いてきた。
「電話、終わりましたか?」
「あぁ、終わった
僕は着替えたらもう行くことにするよ」
チラリとスマホで時間を確認すると、もう8時になろうとしており、マーモンは立ち上がりパジャマのボタンを外しながらそう告げた。
「どうせホテルのチェックアウトは明日だから、君はホテルで過ごしていてもいいけど」
「貴方の任務についていくことは」
「無論、だめに決まっているだろう?
さっきも言ったけれど、一応任務の事は第三者に口外してはいけないんだから」
「まぁ、そうですよね」
「その代わりと言ってはなんだけれど、君にお願い事あるんだよね」
「お願い事?なんでしょう?」
パジャマを脱ぎ終え、ヴァリアーの隊服へと袖を通しながら風へと顔を向けると、風は不思議そうに首を傾げる。
「悪いんだけれど、リボーンの電話番号教えてくれる?
ずっと着信拒否にしてるから番号分からなくて」
「リボーンの、ですか?
別にいいですが…今回の任務、リボーンにも関係が?」
マーモンからの頼みに風は自分のスマホを差し出すと、マーモンはそれを受け取りリボーンの番号を自分のスマホへと入力をして、そのまま風へと返した。
「リボーンに、というよりも他にね
少し確認しないといけないから、任務に向かいながら連絡してみるよ」
登録が完了し、簡単な手荷物だけを手に取るとマーモンは風の目の前へとスッと立ち、風を見上げる。
「それじゃ、行ってくる」
「えぇ、お気をつけて
数時間も貴方と離れ離れになるのは心苦しいですが、仕方ありませんね」
「まぁ…うん…そうだね…風」
「はい、なんでしょうか?」
「…」
名前を呼ぶと口元に笑みを浮かべながら小首を傾げる風。
その表情を見て、マーモンは少し恥ずかしそうに風へと両手を伸ばした。
「…ちょっと…ギュー…してくれるかい…?
離れるの…少し、寂しく感じてしまって…」
「…えぇ、もちろん
貴方が望むのであれば」
マーモンの唐突な発言に、風の目が軽く見開かれるも、すぐに嬉しそうに微笑みながら手を伸ばして優しく身体を抱きしめた。
抱き締められ、マーモンは風の首筋へと顔を埋めた後に、恐る恐る背中へと手を回して抱き締め返す。
「そんなに私と離れるのが嫌なのですね」
「嫌、というわけではないけれど…まぁ、なんというか…君がさっき、僕にキスをしたからそのせいかもね」
「おや、私のせいということですか」
「うん、君のせい…君の…」
「…では、仕方ありませんね
貴方が任務から帰ってきたら、うんと甘やかさければ」
おかしそうにはにかみながら、風はマーモンの額へと軽くキスを落とし、マーモンはだんだんと恥ずかしくなってきたのか風から身体を離した。
「もういいよ、ありがと」
「そうですね、これ以上は私が離したくなくなってしまいますし」
「だろうね
それじゃ、行ってくるよ」
「えぇ、いってらっしゃい
帰りをお待ちしておりますね」
自分へと向かって小さく手を振る風へと声をかけると、マーモンはホテルの部屋から出ていった。
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