甘えるのが苦手なら
「…ったく…めんどくせぇったらありゃしねぇ」
「まぁまぁ、そう言わないでスクアーロ」
めんどくさそうに頭をかきながら歩くスクアーロの横を、ルッスーリアが嗜めるような口調で声をかける。
「仕方ないでしょう?
まさか、こういう事態になるとは誰も思わないもの」
そう言われ、スクアーロは目の前に広がる光景に目をやる。
そこには無数の死体が転がっており、それを自分の部下達が調べている最中だった。
「ボンゴレと敵対するファミリーの殲滅
本来マーモンちゃんの部隊が受け持っていた任務だったのに、それなのに当日になって殲滅されていたなんてね」
「任務が立て込んでいたとはいえ、部下だけを配置していた俺の配置ミスだな…くそが」
ボスにどやされるのが目に浮かぶ…。
「こればかりは仕方がないわねぇ、甘んじて受け入れるしか
まぁ、うちの子達が無傷だったのが唯一の救いね」
額に手を当てて深くため息を吐くと、ルッスーリアは目の前の死体の前でしゃがみ込んでよくよく観察をし始める。
「どうだぁ、死体の様子は」
「見た目には、致命傷は見当たらない
刺創、弾痕、打撲痕…そういう目立ったものも無いし」
「なら、幻術とかの類になるわけだが…」
そう言いながら隣にしゃがみ込んでジッと死体を観察してみるも、スクアーロは眉間に皺を寄せた。
「…その割には、綺麗過ぎんだよなぁ」
「そうねぇ、幻術にもよるだろうけど指先が綺麗すぎるわ
喉元掻きむしるとか、手で抵抗しようとする動作があれば少しくらい傷とかあざがありそうだもの
これ、相当やり方が手慣れている暗殺者かもしれないわね
もしかしたら…私と同じ、体術の使い手とか」
「ゔぉぉい、体術ならさっきお前が言った打撲痕が残るはずだろぉ」
「言ったでしょう?やり方が手慣れている暗殺者って
本当ならスクアーロが言った通り打撲痕とか小さなあざが残るものだけど、痕を残さないやり方もある
だけれど、本当にそれは危険な行為」
立ち上がりながら説明をするルッスーリアを見上げた後、スクアーロはつられるように立ち上がり隊服についた汚れを払う。
「…外傷がないのなら、おそらく内部に損傷を負っている可能性があるわね
というか、それしかもう考えられないわ
解剖も視野に入れたほうがいいかも…んふふ」
「にやけてんじゃねぇぞ、お前」
「あらやだ、いけない」
口元を緩ませるルッスーリアを怪訝そうな表情で見ながら指摘をすると、ハッとしてルッスーリアは口元を手で隠した。
「私は自分の部隊の子達を連れて死体を何体かアジトに運んでおくわ
死因が分からない以上、犯人の想像も出来ないし」
「ならそっちは頼む
それと、ベルがそろそろ他の任務から帰ってくる頃だろうから連絡してこっちに来るように言っといてくれぇ
嵐の炎で分解したほうが片付け楽そうだ」
「んもう、ボスに怒られるの確定だからって適当にならないでちょうだいッ!」
「別になってねぇよ、もう慣れてるしなぁ」
腰に手を当てながらスクアーロの言動に喝を入れるルッスーリアを適当にあしらう。
「マーモンちゃんには連絡しなくていいの?」
「たぶんあいつ、今日1日は寝てんだろうよ
しばらく任務続きだったしなぁ
急ぎの用も特にねぇし、帰ってから俺が報告する」
「そう、なら後は頼んだわよ
ベルちゃんにはすぐに連絡しとくから」
「おぅ、そっちも頼むぜぇ」
…さて、と。
自分の元から離れ、部下達に指示を出し始めるルッスーリアの背中をしばらく眺めた後、スクアーロは再び自分の足元に転がっている死体へと目をやりしゃがみ込む。
先程ルッスーリアと話していた通り、目立った外傷は見当たらない。
…ルッスーリアの話だと、体術に特化している人物が犯人だろうという話だった。
あくまで、ルッスーリアの考えだから確実というわけではないが…体術に精通しているあいつが言うことだ。
その可能性もある…だが。
「…問題は、そいつが何処の誰なのか」
裏社会で特に今回のような話を聞いたことはねぇし、そういう体術に精通しているという奴の話も聞かねぇ。
ルッスーリアの言う通り、相当な手練れで証拠を残さずに、綺麗に片付ける奴なのだろう。
「体術…」
そこでふと、スクアーロは思い当たる節があるのかぽつりと言葉を漏らす。
…そういや…アルコバレーノの風が体術に長けていたな…。
虹の代理戦で戦った時もルッスーリアとレヴィを意図も容易く倒すほど。
「だが、あいつがそういうことをするようには見えねぇ」
俺と同じ匂いはするが、だからといってこんな事をしてもあいつにメリットなんてねぇ。
マーモンの任務が潰れて収入を得られないマーモンが怒るんだけで、逆に相手にするのがめんどくさく…。
…いや、待てよ…?
あいつは、何故か知らんがマーモンにべた惚れだったよな?
最近、マーモンは任務続きでろくすっぽあいつと会えてなかったはず…。
もし、それが…マーモンとの時間を作るためにやった事だとしたら…。
「スクアーロ隊長」
考え込んでいる最中、ふと部下に声をかけられてスクアーロは立ち上がりながら顔を向けた。
「ルッスーリア様から、ベルフェゴール様と連絡がとれこちらに向かうとの伝言です」
「分かった、残った奴等で片付けするからベルが来るまで待機してろぉ」
「承知いたしました」
そう言うと部下は一礼をしてスクアーロから離れていき、その背中を見送った後に口からため息を漏らす。
「…マーモンの任務…少し調整しねぇとなぁ」
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