甘えるのが苦手なら
「もう、撫でるなら黙って撫でて
君の言い方はいちいち厭らしくてたまらない」
「おっと」
フンッと鼻を鳴らしながらマーモンは言い、のそのそと風の太腿の上に跨りぽふりと体を預けるように寄りかかる。
「そのようなつもりはないのですが…誤解させてしまいましたか」
「うむ」
困ったような表情で微笑みながら、風の手が背中へと回されて優しく背中を撫で始めた。
その優しい撫で方にマーモンは気持ちよさそうに瞳を細め、首筋へと顔を擦り付ける。
…お菓子とか、食事に気を付けることにはなったけど…まぁ、それ以外は特に支障はないし…それに…。
チラリと風へと顔を向けると、"ん?"と風は首を傾げた。
「どうしました?もしかして、撫でる力が強かったですか?」
「…別に、なにも」
ゆらりと尻尾を揺らしながら、マーモンはふと瞳を閉じる。
…こうやって、風にくっつけるのは…嫌じゃないし…。
風の体温、高めだから…気持ちいいんだよね…。
ごろごろごろ。
「ッん…ふ…ふふ…」
頭上から聞こえてくる笑い声。
その声にマーモンはぴくりと反応し、閉じていた瞳を開けながら風を見上げた。
「…なに笑ってるの?」
「いえ…なにも…」
そう言いながらも笑いをこらえ続けるかのように口を閉ざす風。
その様子をジトリとした瞳で数秒見上げた後、マーモンは気にするのをやめて再び瞳を閉ざす。
ごろごろごろ。
「…」
…さっきから…なんか、ごろごろって音が聞こえる…けど…まさか…。
「…ねぇ、風」
「…なんです?」
瞳を開けて再び風を見上げてみると、未だに笑いをこらえているのか口を閉ざし、返事をするために口を開いた。
「…君、聞こえてるでしょ…ごろごろって」
ごろごろという喉を鳴らすような音。
その音が、自分の喉元から出ていることに気付いたマーモンは、自分の喉に触れながら問いかける。
「…聞こえていますよ、先程から」
「…なんで教えてくれなかったのさ、さっき
なんか…すごい恥ずかしいんだけど…」
「いえ、言うとそのごろごろ止めてしまうでしょう?止められるものでもないとは思いますが
せっかく私のお膝の上で可愛く鳴らしてる姿を見られているというのに、勿体ないではないですか」
「なにその自己満」
「それに、録音もしたかったので」
「録音…?」
スッと風の手にいつの間にか握られていたスマホ。
その画面を見てみると、録音アプリが現在進行系で使われているらしくアプリの画面が表示されていた。
「おい、君」
「誤解しないでください、これはヴェルデへの結果報告ですので」
マーモンが問い詰めようとすると、それを遮るかのように風はすぐに弁明をし始める。
「まさかここまでとは思いませんでしたので、その都度報告できるようなものは証拠を取っておいたほうがいいでしょう?
そうしたほうが、貴方に渡される報酬の額も上がるでしょうし」
「それはそうかもしれないけど、許可なく録るのはいただけないね」
「言ったら許可しないでしょう?
しかし…音声だけだと本当にマーモンから出ているのか疑われてしまいそうですね…今更ですが」
「別に大丈夫だと思うけど、僕の音声データと合わせれば僕の声ってわかるだろうし」
「そうかもしれませんが…ちょっと、動画で撮らせてもらっても?」
「えぇ…」
"えーっと"と声を漏らしながら、ぎこちなさそうにスマホを操作し始める風を見て、マーモンは猫耳を少し垂れさせその様子を眺めた。
「動画とかやだよ、恥ずかしい」
「大丈夫ですよ、ヴェルデと私の心の中にしまっておきますので」
「破棄しろ、破棄
それよりも、スマホに夢中で僕のこと撫でる手止まってるんだけど」
スマホに注視している風にムスッとした表情をし、風とスマホの間に割って入るように顔をズイッと近付ける。
「マーモン、これだと動画が撮れませんよ」
「やだ、動画とかそういうのはいいから生身の僕を見てよ
それで…」
風が手にしていたスマホを取り上げテーブルの上へと置き、その手首を掴むと自分の頬へと触れさせる。
「マーモ」
「僕のこと、たくさん撫でて…触ってよ」
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