甘えるのが苦手なら
「…はぁ、もうなってしまったものは仕方がない…
都合がいいことに今日任務がなくなって、元々明日は休みだったから大人しく部屋に閉じこもることにするよ」
自分の尻尾の先端をぺろりと舐めながらマーモンは諦めたような口ぶりで言う。
「…」
「…今度は何さ」
「いえ…まるで毛づくろいをしているかのようだな、と」
「毛づくろいって、猫じゃあるまいしそんなことしないよ」
「いや、完全に猫ですよ」
「うぇっ、舌に毛がつい」
ザラッ。
「ッ?!」
舌についた毛を取ろうと舌に触れてみると、ざらりとした感触にビクッと身体を跳ねさせる。
「どうしました?」
「な、なんか…舌が…ざらざら…」
「舌が?少し見せてもらってもいいですか?」
「ん」
風に顔を近づけてべッと舌を出すと、"失礼しますね"と風はマーモンの頬に手を当てて出された舌をジッと観察をし始めた。
「これは…」
「んへ、ほうはっへふの?」
「すごいですね…本物の猫のようにざらざらしてます」
カシャッ。
「ッ?!」
関心したような口ぶりで言いながらまじまじと舌を見ていた風。
すると、スマホを手に取りマーモンの舌をカメラで撮影しその音と光でビクッとマーモンは身体を跳ねさせる。
「な、にひへ」
「ほら、見てくださいよこれ」
「にゃひほ…うぁ…」
スッと自分の目の前に出されるスマホ画面へと目をやると、自分の舌に無数の突起のようなものがあるのが分かり、ゾワァッと背筋が震えてしまう。
「にゃにほへ…」
「これがざらざらの原因のようですね
なるほど…このようになっているとは…あとでヴェルデに写真を送っておきましょう
もしかしたら、報酬が貰えるかもしれませんよ?」
「んに…」
報酬か…それも悪くはない。
「ヴェルデに会える頃には薬の効果も切れているでしょうし…
マーモン、少し触れますよ?」
「ふはふっへ…ほこひ」
「ここです」
「ッむぐ」
風を見上げ少し首を傾けながら聞くと、風は空いている手を顔の前まで近付けて、指で舌に軽く触れ始める。
「んに、んにににに」
「触った感じも猫と同じような感じで少し痛いですね
でも、なんでしょう…なんか癖になりますね」
「ッうにゃ…ぁぐ…」
こいつ…好き勝手触りやがって…!
「あ、歯も八重歯になって」
ガブッ!
「?!」
指の腹で触れながら興味深そうに口内を観察する風の様子に、マーモンはピクリと反応し眉間に皺を寄せるとガブリとその指に軽く噛み付いた。
「びっくりしました…どうしたんです?」
「んむむむ」
驚いたように瞳を丸くする風とは対照的にマーモンはムスーッとした表情であぐあぐと指を甘噛し続ける。
「あの、マーモンくすぐったいです」
「ひみはふぉふひひのっへほくのほほおはふははへほ」
「調子になんてそんな…のっていませんよ
ただ、貴方の舌の感触が気持ち良いのと無理に舌に触れられて不機嫌そうな貴方の表情が愛らしいので触り続けているだけです」
「…ほへはひほひ」
「気持ち悪くなんてありませんよ?
これは全て、貴方に対する気持ちそのものなのですから!」
「…ほひはへふ、ふぇ、はふぁひへ」
何を言っても通じない風にこれ以上は無駄だと悟ったマーモンはチラリと自分の頬に触れている風の手へと視線を向ける。
すると、風は"仕方ありませんね"と名残惜しそうに手を離した。
「…んふぁ…本当に君ってやつは…」
手が離されると咥えていた風の指を離し、ぺろりとその指を舐める。
その瞬間、風はピクリと少し身体を跳ねさせてマーモンを見つめた。
「あの、マーモン、なにを…?」
「噛み跡、ついちゃったから舐めてるだけ」
うっすらと自分の歯型がついた箇所を集中的に舐めながら言うと、風はほんのりと頬を赤らめて視線をそらした。
「…あの、マーモン…」
「む、なにさ?」
「無自覚でそういうことをするの、やめていただけますか…私が保たないです」
「何言ってんの、君」
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