甘えるのが苦手なら
「…ごめん、なんて?」
「チョコレートも入っている、と言ったのですよ
それに、乳製品もいけないようですね…どちらも下痢嘔吐の症状が出るそうです」
「…!!」
そんな…。
スマホ片手にマーモンと検索をしたのか、風が説明するのを聞きながらガンッとショックを受けて表情を青ざめさせてしまう。
「え…そ、そしたらおやつは…」
「残念ですが、薬の効果が切れるまではお預けですね…
菓子類自体、猫にとっては毒となってしまうようなものですし
ヴェルデに言われた時にそこも確認しておくべきでした…」
「なら今から電話して確認を」
「残念ながらそれは出来ません
今日、ヴェルデは用事があるらしく連絡が取れないとのことでした」
スマホを操作してヴェルデに電話をかけようとするも、風が説明をする。
しかし、諦めきれずに電話をかけてみるも繋がる気配すら見せなかった。
「出ない…」
「だから言ったでしょう?繋がらないと」
「…ちなみに、薬の効果ってどのくらい…」
「それは聞いておきましたよ
前回よりは長くなく、2日ほどで切れるとのことでした」
「2日…!!」
2日と聞いて一層驚きとショックで大きな声が出てしまう。
2日…2日も…甘い物食べれない…。
「なので、今回は解毒剤は貰ってきてないんです
ヴェルデも忙しそうで作る余裕がなさそうでしたし…マーモン?」
小刻みに身体を震わせながら下を向いていると、風がマーモンの異変に気付いたのかひょこっと顔をのぞかせる。
「…る」
「…?すいません、聞こえなかったのでもう一度言ってもらえませんか?」
小さな声で途切れ途切れに言うと、風は聞こえなかったのか耳をマーモンの顔へと近付けさせて生きやすくしようとした。
マーモンはガバッと勢いよく顔をあげて風の服をギュッと掴み、それに驚いた風は瞳を丸くする。
「ッ…お腹痛くなってもいいから…チョコ、食べる…」
「だめです、食べさせません」
「?!」
「いくら愛するマーモンのお願いだとしても、こればかりは許可できません
貴方が苦しむ姿は極力見たくありませんし」
「…今も苦しんでいるんだけど…お菓子、食べれなくて」
「お菓子が食べれなくても命に関わりませんが、身体的なダメージは最悪死んでしまうのでだめです」
「ッ…そ、そもそも君のせいでこうなったんだからな?!
勝手に僕に薬盛って!」
「それは…猫の日なので仕方ありません」
「なにそれ理不尽!
もうやだぁ…お菓子食べれないの辛い…チョコ…ワッフル…ドーナツ…」
「そこまでショックを受けるとは…」
ソファーの背もたれに寄りかかり、ズゥゥゥンと落ち込みながらぶつぶつと呟くとそれに連動して尻尾も元気なく垂れ下がる。
その様子を見た風はソッとマーモンの隣に腰掛けながら、マーモンの頭に触れた。
「すいません…私の欲望のままに行動した結果、貴方を悲しませてしまい…」
「…そうだよ…君、少しは自分の行動を省みたほうがいいよ…
なんだよ週6で人の部屋に不法侵入ってさ…しかも、リング争奪戦後から呪い解けるまで窓の外からバレないように僕の近くにいるって…それはもう、ただのストーカーなんだよ…」
「あ、そんなに過去から省みるんですね
てっきり、今日の朝からかと…」
「朝からって…君が僕に薬を盛ったのは昨日なんだろう?
僕が言うのもなんだけどそれなら正確に言えば、昨日の夜からじゃない?
そもそも、僕のストーカー行為以外で君がヤバいことをするとは思えないけど」
「おや、そこは信頼されているのですね」
「嫌な信頼じゃない、それ?」
「…そうしましたら、これはどうです?」
風の手が頭に触れられて猫耳がピクリと反応を示す。
「薬が切れたら、高級ホテルのケーキバイキングにデートはいかがでしょうか
とあるホテルが期間限定でやるようですので」
「…ケーキバイキング…」
確か、ネットでも見たな…。
そこのホテルってデザート美味しいらしいから一度泊まってみようかと考えてたほどだし…。
「…し、仕方ないな…それで勘弁してあげる」
「…」
「でも、勘違いするなよ
今回だけ、今回だけだからな」
「…ふふッ」
笑みをこぼす風にマーモンは視線を風へと移した。
なぜか分からないが、微笑んだまま口元を手で隠している。
「…なに、その反応」
「いえ、すいません…よほど嬉しいんだな、と思いまして…」
「…?なにを言って」
風の言葉の意味が分からずに首を傾げると、スッと自分の尻尾を指さされてそちらに視線を向ける。
すると視界の端にゆらゆらと尻尾が映り込んでおり、尻尾の動きを見て自分の気持ちを察せられた事に気付き、マーモンは自分の尻尾を抱き抱えた。
「…見るなよ、馬鹿」
「いいではありませんか、愛らしくて
どうせならお泊りにしましょうか」
「…そんなことされたら、なにされるかわかったもんじゃないよ」
→
