後ろ姿に惹かれて


「ほんと、君のそういう所どうにかしてほしいんだけど」

「そういう所、とは?」

太ももの上に乗っていたマーモンだったが、降りようと風の肩に手を置いて軽く力を押すもびくともせずに、風は問いかけに不思議そうに首を傾げた。

「僕の事が好きなのは十分に分かってるけど、そのストーカーみたいな行動のことさ」

「ストーカー…し、しかし貴方との濃密な毎日の記録を残しておきたくて…」

「濃密って…そこまで濃密な日を君と過ごしたりしてないんだけど」

「貴方からしたらそうかもしれません、ただの日常に過ぎないかもしれないですね
ですが、私は違います」

「むきゅ」

腰に手を回し、グッと引き寄せるように風に抱きしめられマーモンは苦しそうに声を漏らす。

「貴方とまたこうして毎日のように会い、お話をするこの日々が、なによりも大切で、とても幸せなことなのです
なので、それを忘れないように、この幸せな思いをいつまでも覚えていたいのですよ」

「…君ってそういう事、よくも恥ずかしげもなく言えるよね」

「自分の気持ちを伝えるのに恥ずかしいもなにもありません
マーモンもたまには、そういう気持ちを私にさらけ出してもいいのですよ?」

「ムム…」

頬へと手を伸ばされて優しく触れる風の手に、マーモンはくすぐったそうに声を漏らした後、その手に遠慮がちに擦り寄った。

気持ち…ね…僕の素直な気持ち…。

瞳を細めながら風の言葉が脳内で繰り返される。

「貴方は本音をさらけ出してはくれませんから、たまにはいいのでは?
まぁ、貴方のそういう所もまた魅力的で好きですがね」

「また君はそんなことを…」

「ふふ、これもまた私の素直な気持ちです」

「むッ」

微笑みながら言った後に、風はマーモンの前髪へとキスを落とし、マーモンはそれに驚いてキュッと瞳を閉じてしまう。

「だからそうやって、いきなり…」

瞳を開けながら言葉を続けようとすると、いつの間にか風の顔が目の前にあり、お互いの唇が触れ合っていることに気付いた。











…あ…。












「ッ…!!」

マーモンはカァッと顔に熱が集まっていくのを感じ、思わず風の肩を掴んで押し返してしまう。
気が緩んでいたのか、お互いの唇はすんなりと離れていき、風はきょとんとした表情を向けた。

「…マ」

「あ、のさ…」

「?」

自分の名前を口にしようとする風を遮るように言葉を被せながら、マーモンはススーッと風から顔をそらす。

「…い…」

「…?」











「…今、この状況…この雰囲気でキスしたら…なんか…止まらなくなりそう…だ、から…」












ふと冷静さを取り戻したマーモンは唇を袖で隠し、風から顔をそらしたまま呟くように言葉を口にする。

「じ、自分から挑発した発言したのは分かってる!
分かってはいるんだけど…今、君とキスしたら…なんか…すごい…身体…が…ぞくぞくしちゃって…これ以上はやばいかな、って思っちゃって…」

「…」

「あ…き、君としたくない、ってわけではない!
そういうわけではないんだけど!やっぱり、その…こういう感覚慣れてないから…」

唇のみを隠していた袖をじわじわと顔全体を覆うように動かし、自分の顔に集まった熱の熱さを感じながら風に伝えるようにぼそぼそと呟いた。

「…マーモン」

「…なに…笑いたきゃ笑えよ」

「お顔、見せてもらえますか?」

「…」

「せっかく貴方と2人きりでいるのですから、お顔が見えないのは寂しいです」

少し甘えるかのような言い方にマーモンはピクリと身体を反応させると、じとりとした目つきで風へと顔を向けながらゆっくりと顔を覆っていた袖を退かす。

「む…その言い方ずるくない…?」

「ふふ、貴方にはどのような言い回しが効果があるのか、この数ヶ月でなんとなくわかってきましたからね
安心してください、マーモン
貴方が怖がるのもわかりますから、ゆっくりでいいのです
元々は人と関わるのが不得意な貴方が、こうして私に触れるだけでも十分幸せなのですから」

マーモンの手首を優しく握り、自分の頬に触れさせて瞳を伏せながら風は言う。

「…ほんとは物足りないくせに、よく言うよ」

「おや、貴方も私のことをよくわかっていますね
やはりそこまで意思疎通が出来ているのであれば籍を入れても」

「しない」

「即答ですか…」

即返事をすると困ったような笑みを浮かべ出す風。
マーモンは横目でその様子を見た後に、少し戸惑いながらも風へと顔をゆっくりと近付けて軽く触れる程度のキスをした。

「…マーモ」

「…いつか、また…」

「…?」










「また、こうして…お泊りする時までには心決めておくから…
だから、それまでは…待っててくれるかい?」











「…」

ゆっくりと唇を離しながら風に告げると、驚いたような表情を浮かべており、その顔をジッと見つめて再度口を開いた。

「…どうなのさ」

「…あぁ…もう…貴方という人は…」

小さく息を吐きながらどこか嬉しそうに口元を緩めた風は、マーモンの額に自分の額をこつんと合わせて瞳を閉じる。











「…今度のお泊り、いつにしましょうか」

「…早速決めようとするなよ、馬鹿」











.
6/6ページ
スキ