後ろ姿に惹かれて
「は…初めてっていうのは…」
「そのままの意味ですよ」
戸惑いながらも先程の風の言葉の意味を聞こうとすると、風はマーモンの指に自分の指を絡めてギュッと握りしめ、コツンと額と額を合わせた。
「昔から私、1つのことにしか集中出来ない性格でして…だから、この武術の道を極めてこれたのです
なので、武術以外で夢中になったのは…貴方が初めてなんですよ、マーモン」
「…その割には君…すごい手慣れた感じでエスコートとか…キスとか…諸々してたじゃないか…」
「…こちらから言うのもなんですが、手慣れていましたら週6で不法侵入して甘い物では釣るような非効率的なことはしないと思いますよ?」
それ、自分で言っちゃうんだ…。
「リボーンでしたらスマートに落としにかかっていくでしょうし」
「あぁ…確かにそう言われればそうだね…
なんだかんだあいつ、女性慣れしてるからこのタイプにはこう対応したほうがいい、とか分かっていそうだし」
「…されたのですか?なにか」
「…されてないとは思うよ、僕が気付いていないだけかもしれないけど」
「…まぁ、その件についてはまた追々聞きましょう
ですので、私は彼のように手慣れていませんし器用ではありませんので、とりあえず毎日会って気持ちを伝えよう
そうすれば、いずれは思いが届くと思ったのです
現に今、私のあなたへの思いがちゃんと貴方へと届きましたし」
「うむ」
軽く唇にキスを落とし、幸せそうに口元を緩ませる風を見て、マーモンは恥ずかしさから視線をそらす。
「それにしても…少し意外でしたよ」
「…?なにがさ」
「いえ、貴方がそれ程までに私との行為について悩んでいるとは…
先ほど私を挑発していた方とは別人のようです」
「ッ!」
クスクスとからかうように微笑む風の発言にマーモンは顔を赤くしてバシバシと風の胸板を数発叩いた。
しかし、効いていないのか風は微動だにしない。
「ほんっと、たまに、デリカシー、ないなッ!」
「ふふ、まぁよいではありませんか
お付き合いをするとなるとなれば、いずれはそういうことをすることにはなるのですし」
「そりゃ…そうだけど…そうなんだけど…そもそも、僕男なわけで…だから…その…なんというか…」
叩いていた手を止め、その手で風の服をギュッと掴みマーモンは顔を俯かせる。
「マーモン?」
「…はっきり言って、僕は体格に恵まれてない
君みたいに身長高くないし、それに痩せてて女性のような柔らかさとか…いや、男だからあるわけないんだけどさ…触り心地とか悪いだろうし…
それに…可愛げもないし色気もない…そんな僕に君は…その…そういう事をする気は起きるのかなっ…て…」
「…はい?」
「いや、自分が気持ち悪いこと言ってるのはわかってる!」
マーモンの言葉を聞いてきょとんとした表情を浮かべる風をバッと見上げた後、ハッとしてマーモンは再び顔を俯かせて服を握る力に手を込めた。
「…いやほんと…君が僕のこと好きなのはわかってるし…勃つのもわかってるけどさ…わかってるけど…
というか、そもそも君が勃ったのだって服着てた時だし、いざそういう時になって服脱いで全裸になった時…僕の身体見て…その…」
「…ッ…ふふ…」
「?」
ぽつぽつと小さな声で話をして、マーモンの声が聞こえなくなると不意に頭上から風の笑う声が聞こえてマーモンは訝しげな表情で風を見上げた。
「な、なんで笑うのさ」
「ふふッ…前々からお風呂の時に一緒に入っている時にも言ったではありませんか
我慢をしている、と…貴方がこのように私と密着しているだけでも反応を示すのに、全裸になったら…それはどうなるか…理性を失わないか心配です」
「え…ぁ…あー…」
確かにそうだった。
いつもお風呂に入ってるときに、"我慢してる"とか言ってたから勃たなかっただけで…。
「…ごめん、今の発言は忘れて…」
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