後ろ姿に惹かれて
「あの時、貴方達が忙しそうにしていたのも一つの理由ですが他にも理由があったんです」
「おい、近寄るな変態」
スッと距離を縮めようとする風を制するようにマーモンは己の身を縮めた。
「え、なぜですか?」
「さっきの、赤ん坊の時のストーカー行為をまだ許したわけではないからね」
「いいではありませんか、もうストーカーではなく恋人なのですし」
「むぎゅッ」
満面の笑みでササッと距離を一気に詰めて風はマーモンの背後へと回るとそのまま背後から抱きしめ、マーモンの口から苦しさからくぐもった声が漏れ出る。
「ほんと、君の体温熱くて溶けそうなんだけど…」
「大丈夫ですよ、溶けてもマーモンはマーモンですので」
「そういう事言いたいんじゃなくて」
「…マーモン」
先程までの柔らかな雰囲気とは違い、真剣な声色で名前を呼びながら風はマーモンの首筋へと顔を埋めた。
「む、なんだよ…ってくすぐったいな」
風の髪が自分の首筋にあたる感覚がくすぐったく、マーモンは身動ぎをしながら顔を後ろへ微かに向けるも、風の顔は見えない。
「…私らしくもないことを、言ってもいいですか?」
「…君らしくもないこと?」
「はい…」
「…別に、君らしくないとかはわからないけど…
さっきまでとんでも発言を聞かされていた僕としては、特に気にしないよ」
風の頭へと手を伸ばし、髪の毛に触れると優しく頭を撫でてみる。
それに風はピクリと微かに身体を跳ねさせ、顔を少し上げるかのような動きをした。
「…本当は、貴方が忙しかろうがなんだろうが姿を現して声をかけるつもりだったんです」
「…」
「ですが、貴方がバイパーではなくマーモンとしてヴァリアーで行動をしている姿を見て…充実をしてそうな姿に声をかけていいのか?そう思ってしまったんです
私の姿を見て、呪われてしまった時の事を思い出してしまわないかと…あの時の絶望感を、貴方が思い出してしまわないかと
だから、私は貴方を陰ながら見守ろう思ったのです
そして、なにか貴方に危機迫る時は姿を見せようと」
「…なるほどね…」
風は落ち着いた声色で語り、黙って聞いていたマーモンはふと少しの間瞳を閉じた。
「君の言い分はよくわかったよ…話をしてくれてありがとう」
「いえ…礼を言われるほどでは…
それに、なんだかんだ言って私も怖かったのですよ
赤ん坊の姿になった私を、貴方が結婚相手として認めてくれるのかどうかと」
「一気にいつも通りの君の発言になったな
…でもね、風…その君の考えを否定するつもりはないんだけれどさ」
「はい?」
「…」
言葉を続けようとしていたマーモンだったが、ピタリと止まり口を閉ざした。
…いや、これはだめだな。やめておこう。
風が調子に乗るのが目に見えているし、それになにより…都合が良すぎる。
ふと閉じていた瞳をゆっくりと開けて、マーモンは風へと身体を向け頬に手を伸ばして優しく触れる。
「マーモン?どうしました?」
「なにも
君らしくもない言葉を発している時の君の顔がどんなものか、見ておこうと思っただけ」
「もう、またそのような意地悪なことを」
「それに、汗も流せたし熱いし早く出たいんだよ
僕は出るけど君はどうする?」
マーモンはゆっくりと立ち上がり浴槽から出ながら風へと問いかけると、風は"あー…"と声を漏らした。
「…少ししてから出ますので…先に行っててください」
「…君、まさか…」
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