後ろ姿に惹かれて


「なんで、僕の存在がわかってすぐに…僕に会いに来なかったんだい?」

マーモンは目の前で瞳を閉じて自分の話を聞いている風をジッと見つめながら問いかけた。

「…」

「別に会いに来て欲しかったわけじゃないけれど、君の性格と呪いが解かれてからの僕へのしつこさ的には、僕の居場所がわかったらすっ飛んで来そうな勢いだったから少し不思議で」

「し、しつこさって…愛ゆえの行動です」 

「昔の僕からしたら、あの時の君は粘着質なストーカーみたいなものだよ」

"ストーカー…"と呟きながらガンッとショックを受けている風を見ながら小さく息を吐き、一旦気持ちを落ち着かせる。

「…そんな君が、僕の存在を知ったとなればすぐに今みたいな行動を起こしてもおかしくないと思ってね
別に、理由がないのならいいのだけど少し気になっただけ」

スッと移動をして風の隣へといくと、浴槽へと寄りかかりながら水面を見つめる。
その水面越しに見える風の表情は、少し見えづらいせいか分からなかった。

「…理由がない、といえば嘘になってしまいますかね…」

少しの沈黙の後、風はゆっくりと口を開きながら隣のマーモンへと肩を寄せて同じように浴槽に寄りかかった。

「まさか、そんなに私に会いたいと思ってくださっていたとは」

「会いたいと思ってたら君達から姿を消してないよ」

「ふふ、そうでしたね…
マーモン、実は私…貴方に内緒でここまで訪れた事があるんですよ」

「え?いつ頃?」

「貴方の存在をリボーンから聞いてすぐですから…
リング争奪戦後ですね、その頃は貴方達ヴァリアーはバタついていたので気付かなくても無理はありません」

「リング争奪戦…」

確かに、あの頃はリング争奪戦の件だったりその他で忙しかったけど…まさか、来ていたとは…。

「確かにその時は忙しかったからね…声かけられたりしたら君の事殺ってたかもしれない、忙しさで」

「そんな物騒な…」

「…それで、その1回来て忙しそうだったから声をかけなかった、と…それなら納得でき」

「1回ではありませんよ?」

「ム?」

「あ」

風の言葉にきょとんとしていると、風は"言ってしまった"というような表情を浮かべて視線のみをマーモンから横へとずらした。

「…おい、なんだよその反応」

「…いえ…特には…」

「明らかに何か隠してるって感じじゃないか
なにか隠してるならさっさと言いなよ」

「…怒りませんか?」

視線をマーモンへとチラリと向け直し、少し言いづらそうに口ごもる風。

「怒りませんか、って聞いてる時点で僕が怒りそうな内容だってわかるんだけど
怒らないかどうかはその内容次第だよ、約束はできない」

「…まぁ、言って怒られたところで私にとってはご褒美ですし…」

「ご褒美ってなに?」

「マーモン」











「実は、リング争奪戦後から私達の虹の代理戦が始まるまで
私は貴方のことを見ていたんですよ…ずっとね」









「…え?」

風の口から発せられた言葉にマーモンは声を漏らしながらソソーッと風から距離を取って離れていく。

「なぜ離れるのですか?」

「いや、うん…半分そういうことだと思ってたけどさ…
ちなみに、ずっとって言うのは?」

「ずっとですから、ほぼ毎日です」

「…」

それは本格的にストーカーじゃないか。

「…まぁ、貴方がそう思うのも無理はありませんね」

マーモンの視線を感じて風は困ったような笑みを浮かべた。

「…君が来てるの、本当に分からなかったんだけど」

「目に見えて忙しそうでしたし、貴方の前には姿を現さなかったので
外に、貴方の部屋の前にちょうど大きな木があるでしょう?
そこから貴方のことを眺めていました」

確かに、そう言われれば僕の部屋の窓の所に大きな木がある。
赤ん坊の姿の風の姿であれば、身体はすっぽりと隠れてしまうから気付かなくても無理はない。

「…まぁ…理由はわかったよ…
君の話が本当なら、それで納得せざるを得ないね」

「…」

「…なんだい?まだなにか隠していること、あるのかい?」

"うーん"とまた困ったような笑みを浮かべている風。

随分と歯切れが悪いな。
いつもならこういう言動はしないというのに…。
やっぱり、この話を振るのはよくなかったか?

「自分から聞いといてなんだけど、この話はやめにしようか」

「え?」

「他にもなにか言えないようなこと隠しているようだけど、もう過去のことだし
君も言いたくないようだからね」

「…いえ、そういうわけでは…ちょっと、その時の事を思い出してしまいまして…」

「…君、まさか…僕の私物盗んだりしてないだろうな…?」

「し、してませんよ!流石にその時はしていません!」

「そう…ならよか…ん?」

今、"その時は"って言った?










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