頭の中では分かっているが


「うーん…困りましたね…」

風は大浴場を堪能した後、廊下を歩きながら困ったように顎に手を当てて呟いた。

大浴場を堪能したのはいいものの、先程部屋に戻ろうと扉の前まで行ったのはよかった。
よかったのですが…。

「ルームキーを忘れてしまうとは…」

まだマーモンはお風呂に入っているのかノックしても応答はなく、あいにく大浴場に行くだけだったのでスマホも自分の荷物の中に入れたまま…。

マーモンのお風呂が終わるまで、待つしかありませんね…。
しかし、マーモンは落ち着きを取り戻したでしょうか?
少しだけでも冷静に話ができれば…。

「すいません、そこのお兄さん」

「はい?」

ふと背後から声をかけられて振り向くと、そこには女性が2人立っており、風の顔を見ると頬を赤らめながら近寄ってくる。

なんでしょう、迷子かなにか…ですかね?

「あの、もしかして1人ですか?
よかったら、上の海にあるバーで一緒にお避けでもどうです?」

片方の女性が提案をしてきて風はきょとんとした表情を浮かべた後に困ったように微笑んだ。

「あぁ、すいません…
そういうのはちょっと」

「いいじゃないですか、私達2人で旅行に来てて2人で飲むのも物足りないなーって思ってて」

「お兄さんみたいにかっこいい人と飲めたら楽しい思い出になりそうですし」

「いや、ですから…」

グッと距離を詰められ風は後退る。

最近の若い子は見知らぬ人とも飲むのですかね…それはそれで警戒心がないというか、危機管理がなっていない。
これは、諭さなければ…。

「あの」











トンッ。












「ッ…?」

不意に背中に何かが当たる感触。
風は不思議に思いながらも振り返った。










「…マーモン?」










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