鈍感注意報


「...マーモン、それって」

パッ。

「はい、おしまい」

マーモンはパッと風を掴んでいた手を離した。

「これで満足かい?
こういう風に言えば、君のその過干渉はなくなる?」

「過干渉なんてことは」

「過干渉だろう?
まったく、なんでそんな君に僕が気を使わなきゃならないんだか」

風から顔をそらし、背中をゆっくりと向け服を取り替えようとクローゼットへ向けて足を引きずるようにしながら歩き出す。
すると、不意に左腕を掴まれ腹部に手を回され風に背後から抱き締められてしまった。

「...君ね」

「...先程の言葉は、信じていいのでしょうか」

「...さぁね、信じるか信じないかは君次第だよ」

耳元のすぐ側で聞こえる風の声。
マーモンは少し間を置いてから自分を抱き締めている手をペシッと軽く叩いた。
案外簡単に手は離れていき、仕方なく顔だけ向けると先程の悲しそうな表情とは違い嬉しそうに頬を緩ませていた。

「...ならば、私の好きなようにとらせていただきます」

「ん...そうしなよ」

「それを聞けただけでも私は満足です」

いつものような幸せそうな表情へと変わっていき、にこりと微笑みかけられる。 

「そう、ならもう帰ってよね
僕は今からシャワーを」

「そうはいきません」

「は?」

今度こそシャワーを浴びようとするも、風にガシッと肩を掴まれてしまう。
"今度はなんだよ"と少し苛つきながら再び顔を見ると、笑顔なのは代わりはないがどこか怒りを含んでいる表情になっていた。 

「え、ちょ、なんだよ」

「以前私、貴方に"勘が鈍っている"と言いましたよね?」

「あ...あぁ、確かに言ってたね」

ヴェルデの研究所の後にそんな感じの事言ってたな。

「それがなにさ」

「いえ、貴方は"幻術の使いすぎ"と言っていましたが...貴方の最近の仕事量と休日のヴェルデの治験の影響で十分に休めていないのではないか、と思いましてねぇ」

あ、このパターンはやばいやつだ。

依然として笑顔で淡々と告げる風に対し、アルコバレーノになる以前の事を思い出す。

「マーモン」










「少し私とお話しましょうか」

「ひ...ッ」










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