今後の話をしましょうか
「なぜですか!」
即答され風はバァンッと勢いよくテーブルを両手で叩きながら声をあげる。
「私達思いが通じ合う仲なんですよ?
これはもうお付き合いを通り越して結婚してもいいはずです!」
「...君こそ、何度このやり取りを続ける気だい?」
紅茶の入ったティーカップを手に取り一口飲みながら風をジッと見つめた。
「僕は何度も伝えているはずだ
君と付き合うつもりはないってね
ましてや、結婚なんてナンセンスさ」
「だからその理由を教えてくださいよ
このままでは私は納得できません!」
「近い、離れて」
マーモンは隣へと腰かけてズイッと顔を近づけてくる風の肩を軽く押して離れるように指示する。
「私のこと、嫌いですか?」
真剣な表情で見つめながら肩に手を置く手首を掴みだす風。
マーモンはふと視線をそらし頬を赤らめる。
「...そういうわけじゃないけど」
「ならばなぜ?」
「...別に思いが通じ合ってるだけでもいいじゃないか」
「それは確かに大事ですが、私はそれだけでは足りないのです
貴方は気づいていないだけですが、どれほど貴方に魅力があり、その魅力に囚われている人がどれだけいることか...!」
「本当、君は僕のことになると馬鹿になるよね
僕に魅力なんてあるわけないし、ましてや好意を抱く奴なんて君以外に」
「ならばリボーンはどう説明をするんですか?
以前、彼から正式に告白受けましたよね」
「...あれは...」
「それにベルフェゴールはどうです?貴方に好意ありありといった様子ですが」
「いや、ベルは違うだろう?彼は僕の同僚で弟みたいなものだし」
「それは貴方がそう思っているだけであってベルフェゴールは違うかもしれないでしょう?」
「君は心配性だね」
「以前のリボーンの件、お忘れになったわけではありませんよね?
私が間に合わなければ今頃貴方は傷物にされて一生消えない心の傷を負うことになっていたかもしれないんですよ?」
「ムム...その件に関しては感謝しているよ」
「お付き合いをしている、と公言をした方がトラブルを回避できると思うんです
その方が貴方にちょっかいを出す輩は減ると思...いたいです」
「それ、君の願望だよね」
「...マーモン、私の話真剣に聞いてるんですか?」
明らかに自分の話を真剣に取り合っていない様子のマーモンを風はジトリとした目付きで見つめる。
「聞いてるさ、真剣には聞いていないけど
この話君が僕のところへ来る度...すなわち、ほぼ週6で聞かされているんだ
もう結論はほぼ出切っているのに君はしつこく何度も何度もネチネチと...僕は君のそういうところが嫌いだったんだけど」
「嫌いだった...ということは、今は?」
「そこに関しては今も嫌いなので即改めろ」
「嫌よ嫌よも好きのうち、というやつなので結局は好きなんですね」
「嫌いなものは嫌いだよ」
「ですが、嫌いだった私を好きになった前例もあるんですから
可能性はありますよね?」
「...チッ」
笑顔で語る風になにも言い返せずマーモンは小さく舌打ちをして顔をそらした。
「それに、この話は何度もしていますが貴方からなぜ付き合わないのか詳細を聞けていません
いつものらりくらりとかわされてしまいますからね」
「だから言ってるじゃないか、僕は今の関係の方がいいんだよ
いろいろと楽だしね」
「...マーモン」
「...あのね、風」
名前を呼ばれたマーモンはため息をつきながら風に体を預けるようにぽふりと寄りかかった。
「前にも言ったかもしれないけど、僕は物には執着するけど人間に執着したことはないんだ」
「えぇ、それは聞きました」
「...だから人にこういう好意を抱くこと自体が初めてで...説明が難しいな」
"うーん"と唸りながら言葉を選んでいるマーモンの腹部に手を回して風はそっと抱き締める。
「ゆっくりでいいですよ」
「...簡単な話、他人と恋愛的な感情で付き合ったことがないから怖いんだよ」
「...怖い、とは?」
「人間、初めての体験をするに当たって楽しさもある半面怖さもあるだろう?
僕は今まで他人と関わることを極力避けてきたんだ
それなのに、君はズカズカと人のテリトリーにまで入ってきて僕に接触を図ってきた
まぁ...期間は短いとはいえ、君のいる生活に慣れてはきているけど
やっと慣れてきたところに、今度は恋人としてのお付き合いを始めるなんて
今までの関係...とあまり変わらないだろうけど、やっぱり始めてなことだから怖いのさ
君が僕を怖がらせる、とは思っていないよ?ただ単に、一歩踏み出せない僕が怖がりなのが悪いだけなんだけどね」
「要するに、初体験は怖い、ということですね?」
「...誤解を生みそうな言い方かもしれないけれど、まぁそんな感じかな」
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