過剰供給


突然のヴェルデの言葉に驚いて動きを止めると超能力が切れてしまい、"ガシャンッ"と音を立てながら浮いていたフラスコが床へと落ちて割れてしまった。

「あぁ、ごめん...割っちゃった」

「いや、私も突然声をかけてしまったからな...怪我は?」

「大丈夫さ」

ヴェルデは立ち上がると箒と塵取りを取ってきて割れてしまったフラスコの破片を回収していく。

「...珍しく動揺したな」

回収を終えたヴェルデはゴミ箱へと破片を捨て、片付けをしながら声をかける。

「そりゃ、いきなり超能力使ってるときに声をかけられたら誰でも」

「そうではない、それに貴様の場合は超能力幻術どちらも使っているときに普通に話していることだろう?」

「...」

「私が言っているのは、"私の言った言葉に"という意味だ」

ソファーへと腰かけて立っているマーモンにそう言いながらヴェルデはかけている眼鏡をクイッと上にあげた。

「...何が言いたいのさ」

「別に貴様の悩み事等は興味がない
だが、そのせいで再びこちらに逃げ込まれても困るのでな
本当は首を突っ込むつもりはなかったが、これでは私の実験が進まない」

「...はぁ」

ジッとしばらく視線を交わしていた二人だったがマーモンが小さくため息をつきながらヴェルデの隣へと腰かけた。

「それは...邪魔をして悪かったね」

「あぁ、本当に迷惑なことだ」

「...別に悩み事なんてないさ」

「ならば、なんだ」

「...少し、最近の自分の心の変化についていけなくてね」

マーモンは全身の力を抜いてソファーに深く体を沈め、天井を見上げる。

「以前までの僕は物に執着することはあっても他人に興味を持つことはなかったんだ
それなのに、以前まで嫌いだのなんだと言っていた人間に好意を抱いてしまった...その事に僕の心がついていけてないのさ」

「まぁ、その人物がだいたい誰かは想像できるが
それならば素直に口に出せばよかろう」

「それが出来ないから困ってるんじゃないか
僕は自分の気持ちを口に出すことが少々苦手でね」

「金関係にはうるさいのにな」

「金は別さ、物だから
...まぁ、そのことのせいでちょっとあってね
…自分の安易な行動をしなければ、彼にあんな行動させずに謝らせることはなかったんだけど...って、少し後悔しているよ」

「内容は理解できていないが、ふむ...そういうことだそうだ」

『...』

ヴェルデはテーブルに置いていたスマホに声をかける。マーモンはヴェルデの言葉に不思議に思いながらスマホへと顔を向けるとなにやら通話中になっているのがわかった。

「ムム、電話していたのかい?」

「あぁ、今日の貴様はずいぶんと抜けているな」

「突然の悪口やめろよ」

「そういうわけだから、ここから先は貴様の仕事だ
もうこちらまで来ているのだろう?」










「さっさとこいつを回収してくれ、風」










「は...なにを言って」

ヴェルデの口から出てくる人物の名前に驚いているとふと背後に気配を感じてバッと勢いよく振り返る。
そこにはスマホを片手に持っている風の姿があり、視線があった風はにこりと笑みを浮かべた。

「こんにちは、ヴェルデ...そしてマーモン」

「ずいぶんと早かったな」

「ちょうどこちらに向かう途中でしたので」

「ヴェルデ、君僕のこと嵌めたな?!」

「嵌めるだなんて人聞きの悪い、先程も言ったが貴様がいると研究が進まないのでな
保護者に回収を頼んだまでだ」

「誰が保護者だ、誰が
まったく...勝手に人の会話をこいつに聞かせ...」

そこまで言ってマーモンはピタリと言葉を止める。

...会話を聞かせていた?さっきの会話を風に?









好意云々の話を?










「...ッ...僕帰っ」

「それでは、私達はこれで失礼しますね」

「ッ?!」

電話から先ほどヴェルデに話していた内容を聞かれた事に気付いたマーモンがこの場から立ち去ろうと霧を醸し出していると風にひょいっと肩に担がれてしまい、風はヴェルデへと声をかけた。

「お、おい風離せよ!」

「あぁ、気をつけて帰れよ」

「えぇ、お手数おかけしてしまいすいません」

「まったくだ」

「僕の話聞けよ!風!ねぇ、ちょっと!」 










「話きけぇぇぇぇ!!」










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