過剰供給


「...おい、貴様いつまでここにいるつもりだ」

ヴェルデは自分の研究室のソファーで横たわっているマーモンに声をかける。
しかしマーモンからの返事はなく、ソファーにあるクッションに顔を埋めて反応を見せない。その様子にヴェルデはため息をついた。

「ここに来てからずっとその調子ではないか、なにがあったのかは知らないが研究の邪魔だ」

「...」

「...仕方ない、風に回収を」

何度声をかけてもやはり応答がないために白衣の中からスマホを取り出しながら風の名前を出すとマーモンがピクリと反応を示し、ヴェルデの白衣の裾を掴んだ。

「おい」

「...今、風とは会いづらいからやめてくれるかい?」

「...」

上体を起こしてそう告げるマーモンにヴェルデは少し驚いた表情をする。

「...なにさ」

「会いたくない、ではなくて会いづらいなのだな」

「どっちも変わらないだろう?」

「...まぁ、いい」

"珍しく風となにかあったのか"と察するも深入りすると巻き込まれてしまいそうなのでグッと言葉を飲み込んで空いたマーモンの隣へと腰掛けながらスマホをテーブルへと置いた。

「なぜ私の元へ来た、今日は特に治験があると伝えた覚えはないのだが」

「意味はないさ、まぁ...気晴らしになにか治験があるかなと少し期待はしてたけど」

「そうか、なら帰れ」

「嫌だ」

「今日はやけに頑固だな...」

「僕にも色々都合があるのさ」

「こちらの都合も考えてほしいものだな」

「どうせ君の事だ、やることと言えば実際しかないんだろう?」

「確かにそうだが」

「ならいいじゃないか、別に邪魔をしているわけでもあるまいし」

「...」

「安心しなよ、夜になったら帰るから
明日は任務があるからね」

「...仕方ない、ならばおとなしくしているんだな」

珍しく頑固なマーモンの言動に"これ以上は無駄だ"と察したヴェルデはため息混じりに承諾をしながら近くにあった資料を手にとって眺め出す。

「...ありがと」

ここに置いてもらえることになったマーモンは小さくぽつりと呟くと背もたれに体を預けながら天井を見上げた。

あの日から3日経ったけど風来なくなったな...まぁ、来たら来たで気まずいから非番の今日はヴェルデのところに来ちゃったけど。









...大丈夫かな、あいつ。







 


「...ヴェルデ」

「今度はなんだ」

「暇だから少し僕の相手してよ」

「邪魔をしないと言う約束はどうした」

「そんな約束した覚えがないね」

「...まぁ、いい」

ヴェルデは横目でジッとマーモンを見つめた後に資料を再びテーブルの上へとのせるとマーモンへと体を向ける。

「少しだけなら相手をしてやろう」

「あれ、意外だね
断られるかと思ったから」

「少々時間稼ぎが必要なのでな」

「...時間稼ぎ?」

「こちらのことだ、気にすることはない」

「ふぅん、ならいいや
といっても君のところには研究道具しかなくて何をするでもないんだけどね」

近くにあったフラスコをすっと指差すとフラスコがふよふよと浮き始め、マーモンの回りをゆっくりと回転し始める。

「おい、壊すなよ」

「大丈夫だよ、そんなことしないさ」

「しかしそれは便利だな
暇ならそれを使って片付けを頼みたい」

「えぇ、やだよ
超能力をそんなくだらないことで」

「ほぉ、貴様をタダでこちらに置いてやっているというのにか?」

「...チッ」

ヴェルデにジトリと見つめながら言われるとマーモンは小さく舌打ちをしながら乱雑に置かれている研究道具を指差していく。すると研究道具はフラスコ同様に宙に浮き始める。 

「しまうところは君が指示してよ」

「その棚に種類別に置いてくれるなら別にいい」

「...わかったよ」

ため息をつきながらマーモンは棚の中へと種類別に道具をしまっていく。





 



「なにかあったのか?」

「え...?」










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