過剰摂取



...かわいい…可愛すぎる…。

風は自分に抱きついているマーモンを抱きしめる力を微かに強めながら真顔でマーモンを見つめた。
残念ながら、マーモンの顔はよく見えない。

どうしましょう。
いつもならすぐに恥ずかしがって離れてしまうマーモンが、私にこう密着をして、求めるように抱きついてくれている…。

なんと、幸せなことか。

腕に更に力が入りそうになり、風は寸前のところでグッと堪えると、マーモンの頭部に頬を擦り寄らせる。


"あいつが、お前に好意を抱いていることを"


…そんなこと、もう前からわかっています。

ヴェルデの研究所にて、ヴェルデに告げられた言葉が脳裏に過ぎり、瞳を細める。

マーモンが以前から、私への思いが好意へと向いていること自体…わかっていた。
私が雲雀恭弥との戦いで一ヶ月会えずにいたのがおそらくきっかけだったのかもしれない。


"君にキスされても嫌じゃなかったし、僕、君とどう接したらいいかもうわからなくて…ぇ…もういやだぁ…"


…旅館に泊まった時、マーモンの口から吐き出された言葉。
酔っていたとはいえ、そう言われた時は…自分の今までの気持ちが、報われたような気がした。
ですが、酔っている相手に手を出すほど私も馬鹿ではない。
(結局、その次の日マーモンは覚えていなかったので私の選択は間違いではなかった。)

さてはて、どうしたものか。
マーモンが自分の気持ちに気付くまであと少し、と言ったところ…。










いっそのこと…手を出してしまおうか。











…いや、だめですね。
それではリボーンと同じになってしまう。
しかし、だからといってこれ以上引き延ばすのもマーモンの為にはよくない。

いったい、どうしたら自分の気持ちに…素直になってくれるのだろうか…。

「…風」

「ッ…どうしました?まだ、痛みます?」

小さな声で名前を呼ばれ、風は顔をのぞき込もうとするも、やはり顔は未だに隠されたまま。

「うん…痛い」

「痛み止めありますか?
なければヴェルデからもらってきますが」

「いい、大丈夫」

「しかし」

「いいの、今は…少し…考え過ぎて頭がパンクしてるだけだから」

「…いったい、なにをそんなに考えているのか…教えていただくことは出来ますか?」

「…」

「そこまで考え込んでいるのであれば、他の人に話すことで改善するかもしれませんし
もしかして、ヴェルデに相談していた体調不良の件ですか?
もし心配なら病院に…」

「…君に言ったところで」

「話すことで、気持ちが軽くなることもあるんですよ?」

見えないマーモンの頬に向かって手を伸ばし、優しく触れてみる。
ふに、と少し揉んでみると柔らかい。

「むむ、ねぇ」

ふにふに。

「ちょ、風」

ふにふに。

「んむむ」

ふにふに。

「ッ…い、いつまで触ってるんだよ!」

触れている感触が気持ちよく、つい夢中になって頬を揉んでいるとマーモンがバッと顔を上げた。
その瞬間、2人の視線が合い、マーモンの動きがピタリと止まった。

「…やっと、お顔を見せてくれましたね」

「ッ…!」

マーモンの顔が見れたことで嬉しさが込み上げてきて、微笑みながら言うとマーモンの頬がカァッと真っ赤に染まっていく。

「も、そんな顔で僕を見るなよ!」

「そんな顔って、いつもと同じでしょう?」

「そうだけど、そうじゃなくて!
君の、そういう幸せそうな顔とか…いろんな表情見ると胸、キュッて苦しくなっちゃうんだよ!」

自分の胸辺りに触れながらマーモンの発する言葉に瞳を丸くしてしまう。

「なんでそんな顔、会う度に僕に向けるんだよ!
あんなに僕は、君のことを傷付けるようなことを言ったのに、君はいつでも僕に優しくて…なんで…」

せきを切ったように言葉を発し続けるマーモン。
だんだんと言葉を発する声に力が込められ、じわりと瞳に涙が溜まり、眉が下がっていく。


…あぁ、本当に彼は…。


「…君の…」


そんなに感情を剥き出しにするほど、私のことを…。











「君のせいで…苦しいよ…風…」










愛してくださってるんですね、マーモン。











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