過剰摂取
「すいません、貴方に来るのを控えるように言われたのに…」
窓枠から足を離して床に着地をする風は、申し訳なさそうな表情を浮かべながらマーモンへと声をかけた。
その表情にマーモンは小さく息を吐き、顔をスッとそらす。
「…別に、元から期待してないよ
どうせ、君の事だから言ったところで聞かないだろうし」
「ふふ、それは否定しません
ちょっと遅くなってしまったのですが、ケーキ買ってきたのですがいかがです?」
"今日はショートケーキです"とケーキが入ってるであろう箱を目の前に差し出され、マーモンはそれをジッと見つめた後に背中を向ける。
「…紅茶、君の分も淹れるから待ってて」
「あ、私が淹れますよ?」
「いいから、君は座って待ってて」
「…それでは、お言葉に甘えて」
…どうしよう。
ソファーに腰掛ける風をチラリと見ながらマーモンは紅茶の準備をし始めた。
風、来たけどさっきの態度謝るべきか…。
そもそも、不法侵入するほうがおかしいんだけどさ。
…来てくれたのは、嬉しいんだけど…今の僕の状態で、ちゃんと…いつも通り話すこと、出来るかな…。
「…ッ…いた」
ズキッと頭に痛みが走り、声を漏らしながら額を手で押さえる。
「どうかしましたか?どこか、怪我でも」
「ちょっと…頭が痛くてね…」
「?!それは大変です!熱測りましたか?!」
マーモンの言葉に風はソファーから勢いよく立ち上がり、マーモンの元へと駆け寄った。
「大丈夫だよ、熱とかそういうのはないから」
「ではもうおやすみになりましょう?
こういう時は休むに限りますし」
「…うむむ…でも、ケーキ…」
風が持ってきた、ケーキの箱に視線を向けるも、それを遮るように風はスッと動いてマーモンの肩を掴んでくるりと方向転換をさせる。
「ケーキは元気になってからでも食べれますから
ほらほら、早くベッドに行きましょう?」
「…仕方ない…なら今日は君も帰りなよ
明日も休みだからまた明日」
「いえ、貴方が眠るまでは一緒にいさせてください
心配ですし」
「いやでも」
そう思い後ろにいる風に少し顔を向けて帰るよう促そうとするも、心配そうに眉を下げて自分を見ている姿が目に入り、"う…"と声を漏らした。
「…し、仕方ないな…僕が眠ったら、帰ってよね」
「!…はい、ちゃんと貴方のことを看病しますから」
顔をそらして寝室へと向かうと、風は表情をパァッと輝かせてマーモンの後をついていく。
「…あのさ」
「はい、なんでしょう?」
マーモンはベッドへと腰掛け、自分のことを見下ろす風をジッと見上げる。
「…流石に、そうやって見下されながらは…眠りづらいんだけど」
「おや、そうですか?
では、ここ失礼しますね」
風は少し考えた後にマーモンの横にそっと腰掛け、マーモンに横になるように促した。
「これならば威圧感とかはないでしょう?」
「うん、まぁ…そうだね…」
「なんなら添い寝でも…って、数日前もしましたね、そういえば
そんなに添い寝ばかりしてはマーモン嫌ですよね」
「…いや…」
"はは"と眉を下げながら言う姿を見たマーモンは、風の服の裾へとソローッと手を伸ばして弱々しく握りしめる。
「…えっと、マーモン?どうしました?」
「…して…添い寝…」
「…」
「…ギュッてしながら…して」
伏し目がちにぶつぶつと呟くように言うと、風は少し間を置いてからベッドに横たわり、隣をトンッと指差した。
「どうぞ、マーモン」
「ム…」
マーモンはおずおずと風の横に横たわると、風は手を伸ばして背中へと腕を回して優しく抱きしめる。
…あぁ…心地良い。
風の体温を感じ、さらに体温を感じようと風の服をギュッと握り締めて身体を密着させる。
…僕、こいつの事嫌いなのに…嫌いなはずなのに…ほんと…。
でも、こうして触れ合うのは、嫌ではない。
むしろ、嬉しいというか…なんというか…。
「…あの、マーモン」
「?なに?」
悶々と考え込んでいると不意に頭上から声が聞こえてきてマーモンが顔を上げると、風が頬をほんのり赤く染めながらマーモンの頭を撫で始めた。
「…あまりくっつかれると…いえ、嬉しいのですが、その…」
「…あぁ、ごめん…」
風の反応に、"いつものか"と思うとそっと回していた手を離れさせようとする。
…でも…今は…。
離そうとしていた手をピタッと止め、マーモンは先ほどよりも強く服を掴んだ。
「…ごめん、風」
「え?ッちょ…」
ポフッと風の首筋に顔を埋めて先ほどよりも密着するように抱き着くと、風の戸惑ったような声が聞こえてきた。
「…勃ってもなにも言わないから…だから…」
「今は、こうさせて」
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