過剰摂取
「惚れてるって…君がボスの強さに惚れてるとか、そういうあれかい?
残念だけど、僕は武術よりも幻術のほうが上だと思ってるからね
それはないよ」
「ゔぉぉい、いつにも増して回る口じゃねぇか
そういう意味で言ってないって、お前わかってるだろ」
手に持っていた書類をスクアーロはバサッとデスクに叩きつけるように置くと立ち上がりマーモンへと近付いて目の前で立ち止りジッと見下ろした。
「…なら、どういう意味さ
あいにく、僕には心当たりがないよ」
「…はぁ…なんで俺がお前のそういう相談にのるしかねぇんだよ、気まずくて仕方ねぇ」
めんどくさそうに後頭部をかいた後、ドカッと勢いよくマーモンの隣へと腰掛ける。
「恋愛的な意味に決まってんだろが
風のこと、そーいう意味で好きなのかって聞いたんだよ」
「…違うよ」
スクアーロの言葉が何度も何度も、脳内で繰り返される中、マーモンは震える声で呟いた。
「…僕が、彼に…そういう感情を持つはずがない」
「…」
「だって、僕はあいつの説教するところも、心配するところも、馴れ馴れしくするところも、笑顔も、声も…あいつのすべてが…なにもかも嫌いで…」
そうだ、昔から風から…僕に向けられる、笑顔。
優しさ。
声。
好意。
すべてが、嫌いだった。
だって、理解が出来ないから。
「なんで、僕に一目惚れして…好意を一生懸命、会う度に伝えてくるのか…
なんでこんな僕に…彼なら、もっといい人が…風に合う人がいるはずなのに…僕に…好意を…」
僕達が呪われて…赤ん坊の姿に変えられ十数年。
僕が姿を消している間も、僕の事を思い、僕の事を探し続けて…。
"バイパー"
「…も…分かんない…意味が分からない…」
考え過ぎて、頭が痛い。
マーモンは両手で顔を覆い隠し、ギュッと瞳を閉じる。
「…マーモン、今日は部屋戻れぇ」
話を黙って聞いていたスクアーロだったがため息混じりにそう言うと立ち上がってマーモンへと背中を向ける。
自分から遠ざかっていく声に、マーモンは顔を上げてスクアーロの背中を見つめた。
「…いや、書類整理手伝うって言ったし…まだなにも手つけてない…」
「その状態じゃ、ろくに出来ねぇだろが
確認漏れがあっても、後の処理がめんどくせぇしな
それに、お前が任務でいない間にある程度は処理が済んでるからそんなに急いでもねぇよ」
「…でも…」
「いいからさっさと部屋戻れ
そんで、落ち着いたら手伝え」
確かにスクアーロの言う通りだ。
この状態じゃ、もしかしたら重大なミス犯しそうだし…。
チラリとスクアーロのデスクに目をやると、確かに以前に比べてデスクの上の書類の量がすっきりしているように見える。
「…うん、ごめん…ありがとう」
マーモンは深呼吸をすると立ち上がり、ふらふらとおぼつこない足取りで扉へと向かって歩いていく。
「マーモン」
「む…なに?」
名前を呼ばれ振り向くと、スクアーロは椅子へと座っており書類に目を通していた。
「…お前、なんだかんだ考え過ぎてドツボにハマる癖あるからなぁ
あんまり難しく考えないで、本能で動けぇ」
「本能って…スクアーロじゃあるまいし…」
「うるせぇ、その方がいいって時もあるんだよ
特に、今の状態のお前にとってはな」
「…まぁ、頭の片隅ぐらいには置いておくよ」
そう言ってマーモンは部屋から出ていき、その姿を見送ったスクアーロは口を開いた。
「…ったく…うちの術士をあんなにぐずぐずにしやがって…」
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