過剰摂取
「おい、殺気漏れてるぞ」
「おや」
ヴェルデの指摘に風ははたと気付き、スッと殺気を抑え込むと困ったように微笑む。
「…私もまだまだですね」
「あれ、風」
殺気で気付いたのかマーモンが勢いよく扉へと顔を向けたと思うと、風の姿が見えたのかソファーから立ち上がり近付いてくる。
「奇遇ですね、マーモン」
「なにが奇遇だよ…また僕の事をつけてきたのかい?」
「いえ、先ほどヴェルデに呼ばれまして」
「ヴェルデ…君…」
マーモンの視線がヴェルデへと向けられ、なにやら訴えるかのような眼差しにヴェルデは首を横に振った。
「…お前の体調が優れないようだからな
帰宅途中で倒れてもなんだから回収係として呼んでおいただけだ」
「余計なことを…別に風の手助けなんていらないから先に帰」
「まぁまぁ、ここで会ったもなにかの縁ですし」
「え…ぁ」
にこーっと笑顔を向けながら風がマーモンの手に触れて優しく握りしめる。
すると、マーモンはその手をぽかんと見つめた後にいきなり顔を赤くしていく。
「い、いやいいから!1人で帰る!」
「たまには私のわがままも聞いてくださいよ」
「いやいつも君、僕の話聞かないよね?
それなのに、よくもまぁそう言えるな!」
「今日は任務なかったですよね?
まだ今日持って行くお菓子を買っていませんので、よろしければ一緒に選びませんか?
それか、どこかカフェに寄ります?
美味しそうなケーキが置いてあるところを見つけたんですよ」
「またそうやって僕のスケジュールを…」
「ケーキ、食べませんか?」
「うむむ…」
ケーキという単語にマーモンは迷ったような表情を浮かべて、少し葛藤しているのか考え込むも、いきなりハッとすると風の手をバッと振り払った。
「い…行かない!」
「おや、それではこのままアジトまで」
「いい!今日はアジトまでついてこないで!」
「は…」
「き、君と一緒にいると最近体調おかしいんだよ!
胸ドキドキするし、い、いろいろ変になるの!」
「え、あ、いえそれは」
「ヴェルデが言ってたけど、ストレスの可能性もあるらしいし、君が…」
「あ、あのマーモ」
キュッと唇を噛みしめるマーモンを見て風が手を伸ばすもバッと勢いよく距離を取られてしまう。
「ッ…だから!僕がいいって言うまで来ないで!」
「?!」
ビシッと指を指しながら言われガンッとショックを受けた風を見てマーモンは気まずそうな表情を浮かべるも、"そ、それじゃ!"とそのまま霧となって姿を消してしまった。
「…なんてことでしょう…」
「…めんどうなことになったな
さて、マーモンも帰ったことだしお前も帰」
「待ってください、ヴェルデ?」
フンッと鼻を鳴らしてその場に膝まづく風を他所にヴェルデがデスクに向かおうとするも、いきなり背後から声をかけられヴェルデは振り返る。
「…先ほど、マーモンがストレスどうこう言っていましたが…」
「…言っていたな」
「貴方、もしや余計なことを言ったのでは?」
ゆらりとゆっくり立ち上がりヴェルデへと微笑みかけながら近付いてくる風の、何とも言えない気迫にヴェルデはスーッと視線を逸らした。
「余計なことではない、その時はその可能性もあることを伝えただけで」
「…ヴェルデ」
「…その時の詳細を、話していただけますか?」
「…その笑みをやめろ、怖いんだが」
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