過剰摂取
「…貴方から連絡を受け取り、こちらへと来ましたが…」
ヴェルデからの呼び出しで研究所へとやってきた風は、ソファーに腰掛けて"うーん"と唸りながら頭を抱えているマーモンとヴェルデを交互に見た。
「これはいったい、どういう状況ですか?」
「…」
「そもそも、なぜマーモンがヴェルデの元に…また治験ですか?
私なにも聞いていないのですが」
「…」
「それよりも、なぜマーモンがこんな事に…」
「…風」
自分の存在に気付いていないマーモンに手を伸ばして話しかけようとすると、それを遮るようにヴェルデに名前を呼ばれその手を止めた。
ヴェルデへと顔を向けると、扉に手をかけており"こっちに来い"と言うような眼差し。
風はマーモンに少し目を向けた後に伸ばしていた手を引っ込めると、ヴェルデのあとをついていき一度部屋から出た。
「…いったいどうしたのです?」
廊下に出て少しマーモンのいる部屋の扉を明けた状態で風が声を掛けると、ヴェルデはめんどくさそうに息を漏らす。
「…お前、随分とあいつに…」
「?」
「…さっき、マーモンから相談を受けたんだ
"もしかしたら、なにか病気かもしれない"と」
「え…マ、マーモンどこか悪いのですか?!
普段の食生活や生活習慣からしてそのようなことは…」
「おい、落ち着け
まだ話は途中だ」
慌てふためく風を見てヴェルデは壁へと寄りかかり、腕組みをして風が落ち着くのを待った。
「…相談を受けて、マーモンに自覚症状があるのかと問うと、心拍の上昇に、胸の苦しさを訴えてきた
なので、私は心臓関係かと思っていた」
「ッ…!心臓…」
「だが、話を聞いていくうちにおかしな点が上げられたんだ
それは、お前がいる時にのみ、その症状が現れるということ」
「…私が、いる時にのみ…?」
「本人曰く、"風と一緒に話してると心拍早くなってドキドキするし…あと、触れられたりすると顔赤くなったり、胸がキューッてなったり"と言っていた」
「…え…あの…それはつまり…」
「…お前、前々から気付いていただろう…」
「あいつが、お前に好意を抱いていることを」
「…」
ヴェルデの言葉に風は瞳を見開いた後、チラリと部屋の中にいるマーモンへと視線を向けた。
「マーモンが無自覚なのをいいことに、愛情を過剰に与え続けた結果が今のあれだ
まったく、巻き込まれるこちらの身にもなってほしいものだな」
「…確かに、彼の…私に対する気持ちはわかっていました」
マーモンが私に好意を抱いてくれていることも。
私とのキスが、嫌ではないということも。
…私と、一線を越えてしまうかもしれない行動が…嫌ではないということも。
「…私としては、もう少し早く気付いてくれるかと思っていたのですがね」
「…あいつは、今まで他人から好意を向けられたことがない
だから、自分が他人に好意を持ったとして、その気持ちがどのような感情なのか理解をするのに時間がかかる
それが今の状態だ」
「ふふ、私のために悩む姿も愛らしいですねぇ…」
「おい、なにを馬鹿なことを…
これ以上、この状態を放置するのはよくないだろう?」
「…」
「風、お前がどういうつもりかは知らないが…
このまま、自分の気持ちに気付かずにお前からの過剰な愛を与え続けたら…」
「…与え続けたら、なんです?」
風は口元に小さく笑みを浮かべながらヴェルデを見ると、ヴェルデは微かに眉間に皺を寄せた。
「…お前無しでは、生きられなくなるぞ」
「…それは、私にとっては良いことなのでは?」
「おい、本気で言ってるのか?」
「ふふ、冗談です
まぁ、良いことには変わりありませんが…マーモンのためを思うと、よくはないですよね
マーモンは今の環境が合っているようですし
私としても、ヴァリアーという組織に属しているマーモンの姿を見るのは好きです
生き生きしておりますし、仲間との関係性も良好ですからね
まぁ…恋敵がいるのは難点ですが」
「恋敵…あいつも、なんだかんだでモテるんだな」
「えぇ、リボーンにも襲われかけていましたし」
「リボーンに…は?襲われかけた?」
「えぇ、私がいない間につまみ食いをしようとしていたようです
寸前で私が来たので事なきを得ましたが…まったく、彼にも困ったものですよ…」
以前にリボーンがマーモンに襲いかかっている光景が脳裏に過ぎり、無意識に拳に力が入ってしまう。
「…私のものだと分かっていながら…手を出すなんて」
「万死に値しますよ」
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