複雑すぎる僕の思考
「お前、よくこんなに情報とれたなぁ」
任務に出て1週間後。
戻ってきたマーモンから報告書を受け取ったスクアーロは、一通り目を通した後に感心したような口ぶり言う。
「僕にかかればどうってことないさ
部下達も動いてくれたしね」
スクアーロの座っているソファーの対面にマーモンは座り、眠たそうに欠伸を漏らした。
「部下達が動いてくれたって言うが...お前、それだけでこの情報量をたったの一週間で取れるもんなのか?
俺が最初に言ってた"2週間"の半分で」
瞳を細めながら自分を見てくるスクアーロの視線から逃れるようにマーモンは顔をスッとそらし、足を組んだ。
「…君が急いでいるようだったからね、僕が寝る間を惜しんで動いたまでさ」
「お前」
「安心しなよ、証拠なんて落としてきてない
ましてやファミリーを誰一人殺してきたりもしていないよ」
「...それならいいが、早く済ませたからといって報酬は倍にしたりしねぇぞ?」
「元から期待していないよ」
「お前にしちゃ珍しいな、こういうときは大抵金催促すんのによぉ」
「人が善意で急いで情報持ってきてやったっていうのに随分な言い様じゃないかスクアーロ
それとも、その情報量じゃ足りなかったかい?」
「そんなことは言ってねぇ、むしろ出来すぎな位だ」
「そう、ならよかったよ
悪いんだけれど、今から二日間くらいはゆっくりさせてもらえるかい?
一週間寝ずに情報集めしてたから流石に体力の限界でね」
マーモンは"んっ"と軽く伸びをして一息ついた後にゆっくりと立ち上がり、スクアーロへと声をかけながら背中を向けた。
「2日でいいのか?今んところ術士が必要な任務ねぇから4日間位休めるが」
「いや、2日で充分
休み明けに僕がいりそうな任務あったら入れといて...それじゃ」
「お"ぅ、助かったぜぇ」
少しふらついた足取りで、マーモンはスクアーロの部屋から出ていき自室へと向かった。
案外一週間寝ずに任務してもなんとかなるものだな...まぁ、だからといってまたやろうとは思えないけど。
今日は今から1日丸々寝てもう1日は...。
そんなことを考えていると部屋の前について扉の前でぴたりと止まる。
あー...そういえば風には2週間って言ってたんだよな...。
そもそも今回こんなに頑張ったのは風に早く会いたい一心だったから...あれ、会いたい?僕あいつに会いたかったんだっけ?
睡眠不足のせいで頭が回らずに自問自答をしながら扉を開けて中へと入った。
「お帰りなさいマーモン」
「...」
…え?
扉を開けるといつものようにマーモンを出迎える風の姿があり、マーモンはぽかんとした表情を浮かべる。
あれ、なんで風がいるの?会いた過ぎて自分に幻術かけた?
今の現状が理解できず、マーモンは風へと近寄るとそっと手を伸ばして頬に触れる。
「ん?」
いつも、触れている風の頬の感触が手に伝わり、なおさらマーモンの頭の中に?が浮かぶ。
…風に会いたいからってここまで精巧な幻術作るのかよ、僕は。
我ながら呆れてしまうな本当に。
「あ、あのマーモン?」
声まで風と一緒だ、本物みたいだなこれ。
僕の幻術もここまで来たか...。
いるはずがない風の姿。
だけど、触れた感じは本物に近い。
そう感じながらぺたぺたと風の顔を触っていると不意に手首を掴まれてしまった。
「くすぐったいですよ、マーモン」
「...幻術のくせに僕に逆らうのか、君は」
「幻術?いえ、幻術ではないですよ?私は本物です」
「え?」
風の言葉にきょとんとしていると風はおかしそうに笑いだした。
「貴方自身がわかっているはずですよね?私が幻術ではないということを」
「わかってるはずだけど...君に会いた過ぎて幻術で作り上げたのかと」
「...それは嬉しいことを言ってくれますねぇ」
「でもなんで君がいるの?僕、君に伝えた日数よりも早く帰ってきたんだけど」
「そりゃ、愛の力ですよ!」
「...」
「...本当ですよ?」
「...まぁ...いいや
僕、1週間一切睡眠していなくてね」
「なぜそんな無茶を...とりあえず寝た方がいいのでは?」
「そうだね...でもその前にシャワー浴びたい...」
ふらふらと自分から離れるマーモンを心配そうに見つめる風。
そんな風を他所にマーモンはその場でローブを脱ぎ出すと次々と服を脱ぎ始める。
風はその様子にギョッとすると慌ててマーモンの服を脱ごうとする手を止めた。
「ッ?!ちょ、ちょっとマーモン!」
「え...なに?」
「なにじゃありません!なぜここで脱ぐのです?脱衣場で脱いでください!」
「あぁ...うん、そうだね...脱衣場...」
風に言われてマーモンはボーッとした表情でふらりと脱衣場へと行くとパタンと扉を閉めた。
...だ、大丈夫でしょうか...。一人でシャワー浴びれますかね。
しかし、心配だからといって覗くのはよろしくないですよねぇ...。
シャワー室から"シャァァァ"とシャワーの音が聞こえてくる。
あ、ちゃんと浴びれてますね。それならひと安心です。
風は安心したように息を漏らし、マーモンが出てくるまで待とうとソファーに腰かけた。
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