複雑すぎる僕の思考


「...さて、と」

任務の準備を終えたマーモンはソファーへと腰かけて一息ついた。


任務行くまであと一時間あるな...なにしよう。
もう任務の内容は頭に叩き込んで行動パターンももう予習済み。
任務を成功させる為の事は全てやった。
あとは時間になるのを待つだけ。

...それにしても。風のやつ、本当に僕の言った通り来なかったな。
いや、僕が言ったから当たり前と言えば当たり前なんだけど...。


マーモンはテーブルへと置いてある自分のスマホに目をやった。

『貴方の姿が目の前になくても、声が聞けるなんて』

「...」

ふと、以前風が言っていたことを思い出してスマホを手に取り連絡先の欄を見る。
以前、交換した風の電話番号。

「...電話したら、本当に出るのかな」

連絡先をジッと見つめた後にマーモンは恐る恐る電話番号を指で押して、耳にスマホをあてる。コール音が聞こえてきてマーモンはふと瞳を閉じた。

まぁ、風の事だからどうせ修行とか言って武術でもやってるから出ないでしょ。
この前一応確認したけど、本当にこれが風の連絡先か調べるだけだから。ただそれだけ。










『はい、もしもし』

「ッ!!」

数回のコール音の後、いきなり音が聞こえなくなると風の声が代わりに聞こえてきてマーモンはビクッと体を跳ねさせる。
本当に電話が繋がると思っていなかったマーモンは驚きのあまり通話終了のボタンを押してしまいテーブルにスマホを置いた。

「...」

あ、やば間違えて電話切っちゃった。
いやだって出るとは思わなかったから。
今は夜の10時だし寝てるかと...。

プルルルルッ

「!」

頭の中で考え込んでいると自分のスマホから着信音が鳴り響き再び驚いてしまう。
スマホを手に取り画面を見ると【風】の文字。
マーモンは通話ボタンを押すとスマホを耳にあてた。

「も、もしもし...」

『もしもし、マーモン?』

「...」

風の声が聞こえてきてマーモンは顔を手で覆い隠す。

『突然電話がきたので驚きましたよ
なにか私に用でも?』

「...」

『...マーモン?』

「えっ?あ、あぁ...ごめん」

『どうしました?なにかありましたか?』

「いや、なにもないよ...なにもないんだけど...えっと...」

マーモンは唇をギュッと噛み締めた後に深呼吸をして口を開いた。









「ッ...き、君の声が...聞きたくなってしまって...」

『...え?』










「いや、本当にごめん
ただ、それだけなんだ...それじゃ」

『待ってください』

早口でそう言い電話を切ろうとしたマーモンを止めるように風が声をかける。

「...なんだよ」

『...ふふっ、いえ
私も貴方の声が恋しかったので、少々お時間ありますか?』

「...あるけど、任務前だからそんなに話はできないよ」

『え、任務前に電話してきたんですか?』

「もう準備も終わってたからあとは出る時間を待ってる状態だったんだよ」

『あぁ、なるほど
まさか貴方から電話が来るとは思ってもみなかったので嬉しいです
まさか私の声が恋しかったとは』

「恋しくはないけどなんだろうね...いつも君がいるのに3日間近く聞いてなかったから、聞きたくなったのさ」

『それが"恋しい"と言うんですよ、マーモン』

「ムムム...」

『まぁ、今回はそういうことにしといてあげましょう』

「あの...風」

『なんです?』

「この前はごめん、嫌な態度をとってしまったね
君を無理やり追い出したりして」

『...ッふふ』

くすくすとおかしそうに笑う風の声が聞こえてきてマーモンはムッとした表情を浮かべた。

「な、なんだよ...なにがおかしいのさ」

『すいません、別に気にしてないので大丈夫ですよ
今の貴方はどんな表情をしているんですかねぇ』

「いきなりなんだよ」

『だってこんなに可愛らしい声で貴方が私に謝っているんですもの
気になってしまいましてね
その場に私がいないのが悔やまれます
その上今日から2週間も会えないとなると...やはり寂しいですねぇ』

「...」

『マーモン、貴方も寂しいですか?』

「...フンッ、調子にのるのも大概にしなよ」

『まぁ、そうですよね
貴方が寂しがってくれるわけ』










「...さ...寂しい...よ...?」

『...えっ』











ぽつりと小さな声で呟くと風の口から驚いたような声が聞こえてくる。

『あの、マーモン今なんて』

「すまないね、もう時間だから切るよ
それじゃ」

『あ、ちょ』

マーモンは矢継ぎ早にそう言うと風の言葉を聞かずにそのまま電話を切ってしまい、スマホを握りしめて深いため息をついた。










...僕の、馬鹿。










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