複雑すぎる僕の思考


「2週間の長期任務、ですか」

「あぁ」

本日のお菓子であるティラミスの容器をマーモンへと手渡しながら風は言う。
マーモンはティラミスを受けとると早速スプーンで掬って一口食べる。

「...ちょっとあるファミリーの偵察をね
任務は3日後、その任務中は僕はいないからここには来ないでね」

「そうですか...それは寂しいですね」

任務の内容を聞き少し寂しげな口調で言う風をマーモンは横目で見た。

「...寂しいもなにも僕達は会いすぎなんだよ
なんだよ、週6って...僕が来いと行ったわけでもないのに君はいつも勝手に来てさ」

「通い夫ですから」

「その設定まだ引っ張るのか...全く
君のせいで...」


"僕も君がいることに慣れてしまって少し寂しい"


口から出そうになった言葉。
マーモンは唇を固く閉じ、ふと瞳を閉じた。


…末期だな、これは。


「...私のせいで、なんです?」

「いや、なにも
とりあえず、任務中はここに来ないで
僕の任務先に来るのも禁止」

「え、それでは私の役目はなしと?」

「うん」

「2週間貴方に会うこともできない?」

「うん」

「私に死ねと?」

「…死活問題にまで発展するの?」

「当たり前じゃないですか、毎日毎日貴方の喜ぶ顔見たさに私はお菓子を貢いできたんですよ?
それなのに...2週間も貴方の喜ぶ顔や恥ずかしがる顔、あんな顔やこんな顔も見れないなんて...ッ...!!」

風は悔しさから瞳から血の涙を流し始め、マーモンは若干引いた瞳でその様子を眺める。

「いや、そう言われても困るし僕らの関係はそこまで密接したものではないよ」

「…私が一ヶ月いなかった時は、あんなに寂しいと言ってくれたのに」

「それは…君が連絡も何も寄越さないから」

「それ以前に、私マーモンの連絡先知りませんよ?」

「…あ」

風の言葉にはたと気付いたマーモンは、お互いの連絡先を知らないことに気付いた。


確かにそうだ。
アルコバレーノの連絡先知ってるの、ヴェルデとリボーン(現在着信拒否中)しかいなかったんだ。


「…そもそも、君ってスマホ持ってるの?」

「えぇ、まぁ…
今のご時世、スマホの1つでも持てとリボーンに言われまして…
文だと時間がかかるから、と」

「文て…そりゃ、時間かかるよ…
でもそうか、君も持ってるんだね…ふぅん…」
 
用意された紅茶の入ったカップを手にし、マーモンは意味ありげに言葉を漏らしながら風をチラリと見る。


連絡先…いや、こいつの連絡先なんて別にいらないよなぁ。
ほぼ毎日来てるんだし。
でも、前みたいにいきなり姿が見えなくなっても困るし…。
連絡先が欲しいとか、そういう気持ちは…。


「あの、マーモン」

「ム?」

悶々と頭の中で考えていると不意に名前を呼ばれ風へと顔を向けてみる。
すると、風はスマホを手にしてマーモンの隣へと腰掛けた。

「連絡先、教えてくれませんか?」

「え?」

「お互いの連絡先が分かっていれば、今後のためにいいかと思いまして
ほら、貴方の任務が長引きそうな時は事前に連絡くだされば私もこちらに来ないですし
私も私で、以前のように雲雀恭弥との戦いが長引いたりした時は連絡できますし」

つらつらと理由を述べる風を、マーモンはきょとんとした表情で見つめる。

「風」

「はい、なんでしょう?」

「そんなに理由長々と話してるけど…本当は?」

「貴方の連絡先が欲しいだけです」

「本性出したね…まぁ、いいよ」

キリッとしたいい顔で言う風を見てマーモンは自分のスマホを手にすると、風の表情がパァァと明るくなった。

「いいんですか?!」

「いやだって、また君が長期間いなくなって探しに行くのも面倒だし
それに、こっち来る時に連絡くれれば甘い物なにが食べたい、とか催促できるからね」

「…」

「ほら、番号教えて」

「あ、はい…」

「…?」


なんだ?いきなり大人しくなって…。


風の様子に不思議に思いながらもマーモンは風のスマホに映された電話番号を入力した後、すぐにその番号へと電話をかける。
風のスマホの着信音が鳴ったのを確認したマーモンはすぐに電話を切った。

「はい、今の番号が僕のだから」

「…ありがとうございます」

「…おい、なんでさっきからいきなり大人しくなってるんだよ
怖いんだけど」

「え?あぁ…すいません…ちょっと、あまりの嬉しさに感極まりまして」

「え?番号聞いただけでそんなに嬉しいの?」

「それだけではなくて…ふふ、まぁ…気付いてないのならいいです
番号、ありがとうございます」

嬉しそうに頬を緩ませる風。
それを見て、マーモンはなんとなく恥ずかしくなり顔をそらした。











「…まぁ…うん…どういたしまして…」










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