手に入れたいもの
「...くそ...」
使われていない部屋の中に身を潜め、壁に寄りかかりながら床へと座り込んだマーモンは小さな声で呟いた。
僕としたことがこんな...いくらあんなことされたことなくて怖かったからって抵抗もできずにされるがままで...。
しかも、あんな無様な姿を風に見られてしまった。
体育座りをして、膝を抱きかかえると自分の額をコツンと膝へと当てて瞳をゆっくりと閉じた。
「...今日はもう帰ろうかな...集会あるけど顔出しづらいし」
どんな顔してあいつに会えばいいんだ...。
キィッ。
「...見つけましたよ、マーモン」
ゆっくりと扉が開かれる音が聞こえたと思うと風の優しげな声が聞こえてきた。
マーモンの姿を見つけた風は安堵の息を漏らしながらパタンと扉を閉めてマーモンのそばへと近付いてくる。
「...なんだよ、抵抗もせずにあんなことをされた僕を笑いに来たのかい?」
「そんなわけないですよ、私は貴方が心配で来たんです」
自嘲するように言うマーモンの隣へと腰掛けながら声をかける風だったが、マーモンの体が小刻みに震えていることに気づいて両手を差し出す。
「マーモン」
「...」
「ぎゅー、しますか?」
「...」
「大丈夫ですよ、本当にぎゅーだけですから
それ以外はなにもしません」
いつもの笑顔を自分へと向けながら言う風をマーモンはチラリと見た後、少し間を置いて風へと体を向けると四つん這いで近づいて風の上に乗ってぎゅっと背中に腕を回して抱きついた。
抱きついてきたマーモンを優しく抱き締め返しながらポンポンッとあやすように背中を叩く。
「すいませんマーモン、私が初めから一緒に来ていれば怖い思いをさせずにすみましたね」
沈黙がしばらく続いた後に風が口を開き、申し訳なさそうに謝った。
「...君のせいじゃないよ、僕がちゃんと抵抗しなかったのが悪いんだ」
「しかし」
「それ以上なにか言うのはやめてよね」
「...わかりました」
言葉を続けようとする風を遮るようにマーモンはジトリと視線を向けながら釘を指すと風は小さく息を吐きながらそれ以上言うことをやめた。
「それに、君が来てくれたお陰でそれ以上の被害はなかったんだし
むしろ君には感謝しているよ、ありがとう」
「だとしてもやはり私は自分自身が許せません
私が片時も離れなければ貴方に怖い思いをさせずにすんだのに...
本来ならばリボーンを殺してしまいたいですが同じアルコバレーノとして忠告だけにしておきました」
「...ふはッ」
先程のリボーンとマーモンの姿を思い出してギリッと歯を食い縛りながら悔しそうに言う風を見てマーモンは思わず吹き出してしまう。
「えっ、なにかおかしなこと私言いましたか?」
「いや、君がそこまで怒るのも珍しいなってね」
「当たり前じゃないですか!自分の嫁が危ない目にあってるんですから!
マーモンも本来ならばもっと怒っていいんですよ?なぜ怒らないのですか?」
「嫁って…怒るもなにも...僕が油断していたからああなったわけだしね
もっと僕がちゃんとしていれば起きなかった事態だ、確かにリボーンに対して怒りはあるけどもそれよりも自分の不甲斐なさに泣けてくるよ」
「...マーモン」
へらりと笑いながら言うマーモンを見て風は名前を呼びながら肩を掴む。
「なんだい?」
「...流石に甘過ぎますよ...」
「え?」
「確かに最近の貴方は今までよりどこか隙があります、それはリボーンの言う通りだと思います
ですが、だからといってそのようなことでは再びリボーンに良いようにされてしまいますよ?」
「ムム、そうは言っても...」
「ならばマーモン」
「な...ッ?!」
風は意を決したような表情を浮かべるとそのままマーモンを押し倒してジッと見下ろした。
「今、この状態で私に抵抗してみてください」
「...」
「本来ならばこのような事をしたくはないのですが、今後リボーンになにかされた場合に瞬時に反応をして対抗する術を学んでおかなければいけません」
「...あ...ッ...」
「ということで貴方が嫌っている私でその練習をしようというわけです
私相手であれば本気で嫌がって抵抗することは可能でしょう?
幻術を使用してもいいです、あっ、安心してくださいね?私は頑丈なので貴方程度の拳等であれば」
「...ッ...」
「...マーモン、聞いてますか?」
この状況の説明をすらすらと説明していく風だったがなにも反応を示さずに黙り込んでいるマーモンに違和感を感じて顔を覗き込んでみる。
すると、マーモンがなにやら顔を真っ赤にして困ったように風を見上げているのに気付いた。
「...おや?」
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