逃げ場を探して


「あっれー、マーモンの声したと思ったんだけどいねぇじゃん」

ツカツカと部屋を歩く靴の音が響き渡り、ベルの声が聞こえてくる。

「今日非番だって聞いてたし、遊び付き合わせようとしたんだけど
んま、どーせ根暗なあいつのことだし?アジト内にいるだろうから勝手に待ってっか」

ドカッと勢いよくなにかに座る音が聞こえ、マーモンはたらりと一筋の汗を頬に垂らした。


なんで…。










なんで僕まで、風とクローゼットに隠れてるんだ…! 

 






部屋の扉が開かれる直前、風にいきなり抱き抱えられてクローゼットの中に隠れる羽目になってしまった…。
だけど、僕が隠れる意味ないよね?風だけでよかったのでは?!

「…おい、風」

「…すいません、つい」

小さな声で声をかけ、文句を言いたげな眼差しを向けると、風は苦笑いをしながらマーモンを抱きしめる力を強める。

「貴方と片時も離れたくなかったので」 

「今そのタイミングじゃないだろ」
 
「え、ではここから出ても密着したままでいいということですか?」

「そんなわけないだろ、馬鹿」

表情を輝かせながら興奮気味に言う風に飽きれながら、マーモンはぽふっと風に体を預けるように寄りかかりながら考え始める。

さて、どうしたものか…。
幻術で僕だけこの場から逃げ出してもいいんだけど、ベルなぁ…妙に感が鋭いから。
でもベルの事だから、僕が部屋に戻るまで出ていかなそうだし…。
いっそのこと、僕だけ出ていって…いや、だめだ。
あまりにも不自然すぎる。

…そうなると…。

「…やっぱり、ここにいるのが得策か」

「たまにはいいではないですか、こうして2人きりになるのも」

「最近、君と2人きりの機会が多かったからもうおなかいっぱいなんだけど」

「しかし、ここまで暗いと貴方のお顔が見えないのが残念です」

「もういいから喋るなよ、気付かれたら面倒だから」

「…はい」

まったく…。

しゅんとした表情をして黙り込む風を一瞥した後、マーモンは小さく息を吐いて瞳を閉じる。

こんな暗くて、狭い場所になにが楽しくてこいつと一緒にいるしかないんだ…。


…ん?


暗くて…狭い…密着してる…。











…。










「…?どうしました、マーモン?
心拍が少し早くなりましたが」

「…いや、なんにもない…というか、平然と僕の心拍把握するのやめて…」

顔を覗き込む風を離れさせるように頬を手で軽く押しながら、マーモンは顔を逸らした。

最近、こいつと一緒にいるから変に意識してるだけだ、うん。
別に変な意味はない、うん。
別に変な気を起こすとか、そういうことしないだろう、こいつも。
だって、ベル近くにいるし、隠れてないとバレちゃうし。

「大丈夫ですか?体調悪くなったり」

「あぁ、大丈夫…でも、少し暑いかも」

「私とくっついていますし、クローゼットは密閉ですからね…」

「だからか…」

自分の額にうっすらとかく汗。
それを手で拭いながら、マーモンはフードを下ろして風を見てみる。
風も暑いのか、胸元を開けて少しでも空気が入るようにと工夫をし始めた。

「…」

「少し離れますか?といっても物音立てたら見つかりそうなのでほんと、少しだけですけど」

「…いや、いい」

マーモンは風の服の隙間から見える胸板をチラリと見た後、再び風に身体を預けて寄りかかりだした。










…ちょっと、刺激が強い。









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