ひと時だけでも独り占め


「ベル」

「ん?」

カフェから出てアジトに向かい歩いていると隣を歩いているマーモンに名前を呼ばれて顔を向ける。

「あのさ、さっきの話だけど」

「さっきの?」

「ほら、風の話」

「あー、そんな話したなー」

「そんな話したなって…君から話ししたくせに、それで」

「別に無理にしなくてもいーや」

「え?」

ピタリと歩みを止めながら言うと、少し反応が遅れてしまったマーモンは数歩先で歩みを止めて振り返った。

「だーから、別に言わなくていいって言ってんの
つか、あいつの話なんて興味ないし」

「えぇ、あれだけ言っといて…」

「うししッ」

呆れた表情で見るマーモンにゆっくりと近付いて笑いながら見下ろすと、マーモンはジッとベルを見上げて首を傾げた。

「俺的にはあいつのせいでお前が変わったのはムカつくし、それでお前が俺と遊んでくれる時間が減ってるのはめーっちゃくちゃ腹立ってる」

「別にそういうわけじゃ」

「王子の教育係なんだからさ、最後まで責任取ってくんないと困るんだけど?
だからさ、マーモン」

「んむッ」

少し身を屈め、フード越しにマーモンの額と自分の額をコツン、と軽く合わせて視線を合わせる。
普段隠れている紅色の自分の瞳と、マーモンの藍色の瞳の視線が混じり合った。










こうやって、マーモンに触れて

マーモンと至近距離で話せるのは

王子の特権










…って、思ってたんだけど。










「マーモン」 










まぁ…










この場所は、譲る気、ない。










「お前の隣に、ずっと王子のこと置いてさ
ずっと遊んでよ」










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