ひと時だけでも独り占め


「んっふふふふ」

「…お前、本当に甘いもん食ってる時は幸せそうな顔するよな」

ケーキバイキングのあるカフェへとやってきたベルとマーモン。
何種類かのケーキを皿に乗せ、一口食べたマーモンが幸せそうに頬を緩ませるのを見てベルは頬杖つきながら呟いた。

「ベル、お行儀悪いよ」

「そんなにここのケーキうまい?」

「うん、美味しい
最初は乗り気じゃ無かったけど、君についてきて正解だったかも」

「ししッ、お気に召したならなにより」

ショートケーキにフォークをさして幸せそうに口に運ぶマーモンを見て、つられてベルも笑みを零す。

「でも、一度アジト戻ったほうがよかったんじゃない?
報告の1つでもしといたほうがスクアーロもうるさくないと思うんだけど」

「別によくね?
あいつがうるさいのはいつものことだしさ」

「まぁ、それは確かに…なら食べちゃお」

スクアーロのことが気がかりだったのかマーモンは少し悩んだ後もケーキを食べることを優先し始め、自分が持ってきたケーキを食べるのを再開し始めた。

様子はいつもと変わらなそうだからよかったわ。
こいつの場合、考え込んでふらーっとどっかに行くっていうのたまにあったし。

「ベル」

「あん?なんだよ」

ふと名前を呼ばれて顔を向けると、フォークに一口分のショートケーキが刺さっておりそれが差し出されていた。

「これ美味しいから食べてみなよ」

「ふーん、ならもーらいッ」

フォークを持っているマーモンの手に自分の手を添えてそのままパクッと口にする。
口の中に程よい甘さと苺の酸味が広がった。

「どう?」

「…ん、うめぇ
マーモン、もうちょいちょーだい?」

「えぇ、やだよ
自分でとってきたらいいじゃないか」

「いーじゃん別に、減るもんじゃねーし」

「僕の分が減っちゃうじゃないか」

「俺が金払うこと忘れんなよ?」

ニンッとはにかみ頬杖を付きながら言うと、マーモンは"仕方がない"というように最後の一口をフォークでさして差し出した。

「はい、早く食べちゃってよ」

「んッ」

ベルは嬉しそうにぱくりと食べ、咀嚼をしているとマーモンが"ふふッ"と笑みを零しているのに気がついた。

「なんだよ、王子の顔になんかついてる?」

「君が小さい頃を思い出しただけだよ
あの頃はベル、小さくて可愛かったのになぁ」

「お前、俺よりも小さいこと忘れてる?」

「そんなことないよ、忘れてないさ」

昔を思い出すようにマーモンは言うと、皿に乗っていたティラミスにスプーンを入れて一口食べ始める。

「…あの頃はさ、呪いを解くことに死に物狂いだったからね…
当時は君の可愛さに気づけなかったなぁ、クソガキ過ぎて」

「なにいきなり喧嘩売ってるわけ?」

「別に売ってないから落ち着きなよ、ただ君のこと見てたらなんとなく思い出したから」

「ふぅん、昔に浸るほどの余裕がやっとでてきたわけ?」

「そうだね、やっと
でも、今考えると呪われたせいで僕は…」

そこまで言いかけてマーモンの動きがピタリと止まった。

「マーモン?」

「…」

「おい、聞いてんの?」

「えっ…あ…あぁ…ごめん」

名前を呼んでも返事をしないマーモンの前でぶんぶんと軽く手を振り声を掛けるとやっと反応を示した。
よくよく見ると、ほんのり頬に赤みが増している。

「ちょっと考え事をしてて…おかわり持ってくるけど、ベルはなにか食べる?」

「んー…ならモンブラン」

「わかった、待ってて」

席を立ち、歩いていくマーモンの後ろ姿。










…え、なにさっきの反応。










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