吐き出されるこの言葉
「もういやだぁ…」
しかし、困りましたね…。
未だに泣いているマーモンを抱き締め、背中を優しく撫でながら風は困ったような表情を浮かべる。
マーモンの本心を聞けたのはとてつもなく嬉しい。
今まで、己自身の心の内を抑え込んできたマーモンがお酒の力とはいえ、私に打ち明けてくれたのだから。
マーモンをずっと思い続けてきた私にとってはとてつもなく幸せな事。
今すぐにでも、この子を本当に私のものにしたい。
泣いている彼の涙を拭い。
キスをして。
今まで彼に触れられなかった分、たくさん触れ。
どろどろに甘やかし。
そして…。
…いや、流石にだめですね。
ふと風はマーモンを抱きしめていた手の力を緩めた。
本心を聞けたとはいえ、酔っている状態のマーモンにそのような事をするのはよろしくない。
「…マーモン、お顔見せてくれませんか?」
優しく声かけをすると、マーモンは数秒の沈黙の後にゆっくりと顔を風へと向ける。
その顔は涙でぐしゃぐしゃになっており、風は"ふふっ"と思わず笑みをこぼしながら指で目元を拭った。
「むむ…笑うなよ…」
「貴方があまりにも愛らしいので、つい…
そこまで私の事で、悩んでいたのですね…」
「…君が、僕にずっと好きとか、愛してるとか言うからだ…」
「ふふ、すいません
ですが、マーモン…貴方は今まで通りでいいんです」
「んむ」
こつんとマーモンの額に己の額をくっつけて至近距離で見つめ合う。
酔っているせいでいつもより赤らんでいる頬も、涙のせいで潤んでいる瞳も、なにもかもが愛おしく見える。
「貴方の思いは、ちゃんと私に伝わっていますから
だから、その気持ちに整理がつくまで…もしかしたら今以上に悩んでしまうこともあるでしょう
ですが、だからこそ…今まで通りに接してください?
私も、今まで通り貴方に好意を伝えますので」
「…今まで…通り…」
「もし貴方が望むのなら、抱きしめることもしますから」
「…スも…」
「ん?」
少し目をそらしもじもじとしながら小さく呟かれるその言葉がうまく聞き取れずにいると、マーモンは伏し目がちに風に視線を戻した。
「…キ…スも…?」
「ッ…はぁ…」
その言葉に風は息を呑んでマーモンの肩を掴もうとするも、寸前で堪え小さく息を吐きながらマーモンの首筋に顔を埋めた。
これは相当酔っている…たちが悪い…。
「…キスはだめです」
「なんで?」
「貴方が本当に私のことを好きになってくれたらもちろんいたします、それ以上のことも
ですが、今の曖昧な関係でキスを私からしてしまったら、それはなんというか…なし崩し的にするのはよろしくないかと」
「僕が望んでも?」
「うぐ、それは…」
スッとマーモンの顔が近付いてきてお互いの鼻先が触れ合う。
「そ、れは…」
「…」
「…だ…」
「…」
「…だ、だめです!
やはり貴方が私の事を好きになってくれるまでは、私からはしません!」
ジッと見つめられ心が折れそうになるも、風はグッと堪えてバッとマーモンから顔を逸らした。
「風」
「…マーモン、あまり私をからかうような言動は」
名前を呼ばれ、風が降り向こうとすると自分の唇に柔らかなものが触れ、マーモンの顔が間近にありきょとんとしてしまう。
「…おやすみ」
数秒後、マーモンの顔が離れるとそう言われてマーモンは瞳を閉じて寝息を立て始める。
え…あ…。
「ちょ、ちょっとマーモン?
今のはなんですか、今のは?!」
「すぴー…」
固まっていた風はハッとしてマーモンに詰め寄るも、マーモンはすでに眠っているらしく反応を見せない。
「…こ…れは…」
「生殺しにも…程がありますよ…バイパー…」
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