吐き出されるこの言葉
「とにかく、水はたくさん飲みましょう
あと、お酒だけ飲むのはいけませんからなにかおつまみでも」
「むむ、おつまみ食べながらだとこれ飲みきれなくなるよ」
ちびちびと残りのお酒を飲みながら言い、マーモンは今しがた出した自分の幻術を消した。
「そうなった場合は私にください
もともと貴方は弱いのですからそう無理に飲み切ろうとしないように」
「君は飲まないの?」
「っと」
缶を持ち少しよろ付きながら膝歩きでマーモンは風に近寄り、ぽふりと太腿の上へと乗って風を座椅子代わりにし始める。
風はマーモンを受け止め、腹部に手を回して落ちないようにした。
「そうですね…私も何か飲みましょうかね
日本酒とか置いてあればいいのですが」
「お酒はからだに悪いからやめといたほうがいいよ」
「いやまぁ、それはそうですが…って、マーモン酔ってません?」
顔をのぞき込むと先程よりも顔に赤みが増しており、ぽわぽわとした雰囲気を出している。
身体の力も抜けきり、風が支えていないとすぐにずり落ちてしまいそう。
「む…失礼な…よっへない…」
「酔ってますよ、完全に…って、いつの間に飲み干したんですか」
「うむむ…」
これ以上飲ませるのはやばい、と思いながら缶を取り上げるももう残っておらず空になっていた。
「本当、今日のマーモンは色々と変ですよ?
お酒も飲み干してしまいますし…」
「…」
「今日はもう寝てしまいましょう?
明日のケーキバイキングに備」
「いやだ」
「いやだって…」
「君との話、まだ終わってない」
まるで駄々っ子のようなその姿。
風はいつもと雰囲気が違うマーモンに驚いていると、マーモンは再び動き出して今度は向かい合うように太腿の上へと座った。
「話、とは?」
「君がなんで僕の事をそんなに好きなのか」
身体の力が抜けているマーモンが落ちないように抱きしめると、マーモンはそう言いながら背中に手を回してギュッと抱きしめ返してくる。
「意味わからないんだよ…呪われる前から、会った時から君は僕に好意を伝えてきてさぁ…
僕が嫌いって言ってもずっとしつこく言ってくるし、ついてくるし、先回りしてたし…」
「しつこくしているつもりはありませんでしたが…」
「君と初めて会った時、もう◯◯年前なのにさぁ…
僕ら実年齢考えたらもういい年のおじさんとかだし」
「メタ話はあまりしないほうがいいのでは?」
「なんでそんなに僕の事好きなんだよぉ…」
うーん、これは…完全に酔っている…。
先ほどよりも酔いが回ってきたのかふにゃふにゃとした言葉遣いで伝えてくるマーモンを少しおかしそうに微笑みかけながら風はあやすように背中をぽんぽんと優しく撫でる。
このままではお話もままなりませんね……。
話したところで、明日覚えているかも怪しい。
本来なら、今日でこの曖昧な関係を恋人関係…あわよくば夫婦になろうと思いましたがまた日を改めるとしましょう…。
「マーモン、失礼しますね」
「む」
風は一言断りを入れるとそのままマーモンを抱き抱え、布団へと移動をすると優しくマーモンを布団の上へと横たわらせる。
「話まだ終わってない」
「今日はもうおしまいです、貴方も相当酔っていますし
明日、またお話しましょう?」
子どもをあやすような口調で言いながらマーモンの隣に横たわり、眠りにつかせようと身体を優しくトントンとリズムよく叩く。
「むむ…まだ、だめなんだよ…話さなきゃ…」
「なぜそこまで今日は」
「だって…わからないんだもん…君のことも、僕のことも…」
マーモンはうとうととしながらも風の浴衣をギュッと握りしめ、風の胸板に顔を押し付ける。
「最初は、君のこと嫌いだったのにさ…君、僕がどれだけ突き放しても傷付ける事を言っても毎日毎日来るし
お菓子たくさん持ってくるし、毎日"好き"とか言ってきて…
なんで、そこまで僕に愛を伝えるのかがわからないんだよ、本当に…」
「…マーモン、それは本当に私が貴方の事を愛しているからで」
「最近じゃ、君が早く来ないかな、とか少しそわそわしちゃって」
「…ん?」
「4日前だって、君、1週間で帰ってくるって言ってたのにさ…1ヶ月も帰ってこないで…
本当だったら、粘写ですぐに居場所探し出せるんだけど、君が他の人といるって分かってしまったらって思ったら、中々やろうと思えなくて」
「あ、あの」
「君にキスされても嫌じゃなかったし、僕、君とどう接したらいいかもうわからなくて…ぇ…もういやだぁ…」
だんだんと涙声へと変わっていき、えぐえぐと泣きながら風の胸板に顔を押し当て続けるマーモン。
うーん、これは…。
マーモンの内なる心を聞いて、ただ黙って強く抱きしめた。
やはり、私の考えは間違っていなかったようだ…。
マーモンは、私に好意を持ってくれている。
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