吐き出されるこの言葉


「マーモン、少し疲れていますか?」

「…」

カップに入った食べやすい大きさに切られたりんご飴。
1切れフォークに刺して口に運ぼうとした時、風は声をかけてきた。

「なんでそう思うの?」

カリッと音を立てながらりんご飴を一口齧る。
りんごの甘さと砂糖の甘さで一気に脳が冴えた気がした。

「いつもより、ふわふわと言いますか…少し違う感じがしまして」

少し心配そうに眉を下げながら言う風からふと視線を逸らし、りんご飴の入ったカップへと視線を向ける。

「…うん、まぁ…なんか考え事してたら疲れたかも」

「考え事?なにか悩んでることでも?」

「…君が気にすることではないさ
僕自身の問題だからね」

チラリと視線を向けると風は"なんでしょう?"と首を傾げ、それを見てマーモンは小さく息を吐き、りんご飴をもう1切れ口へと運んだ。

「では、もう戻りましょうか?
明日帰る時でもここ見れますし」

「いや、大丈夫
今戻るのは勿体ないから…
いつもの小さいりんご飴だと1個食べれるのに、普通サイズだと結構キツイね…」

まだカップに残っているりんご飴。
それを眺めながらマーモンはポツリと呟いた後、1切れをフォークに刺した。

「では、残りは私が食べますよ?
少し味が気になっていましたし」

「うん、そうするよ…はい」

風の口元にりんご飴を差し出すと、風はぱちぱちと瞬きを繰り返す。

「あの、これは」

「食べるんだろう?ほら、手疲れるから早く食べてよ」

「…」

"ん"と差し出すと風は少し視線を彷徨わせた後に"いただきます"と呟くとフォークを握っているマーモンの手にソッと触れながらサクッと音を立ててりんご飴を食べた。

「どう?」

「ん…美味しいですね
しかも、この方が食べやすいですし」

「そう、ならこれあげる
晩ごはん前じゃなければ食べられたんだろうけど」

マーモンは手に持っていたフォークとカップを風に手渡した。
風は受け取るとマーモンをジッと見つめ出す。

「あの」

「ム?なにさ」

「もう一度、食べさせていただくことは可能でしょうか」

「…しないよ」

少し興奮したように詰め寄りながら言う風を"うわぁ"と若干引いたような表情をマーモンは浮かべてしまう。
拒否をされてしまった風は目に見えて分かるようにシュンとした表情をして残りのりんご飴を食べ始めた。

「まったく、食べさせてもらえない位でそんなに落ち込むことは…」

そこまで言いかけてマーモンはピタリと言葉を止める。


待って、よくよく考えたら今…。

こいつに、"あーん"を…。


「マーモン?」

「…ごめん、風
やっぱり僕、先に戻ってる」

「え、それなら私も一緒に戻りますよ?」

「いや、流石にそれは悪いし、今君の顔真っ直ぐ見られないから…」

ススーッと風から顔をそらしてそのまま離れようとするマーモンに、風は"待ってください"と声をかけながら腕を掴む。

「やはり、今日は何か変ですよ?
どこか体調が…」

「そういうのじゃないんだ、ただ…なんか…」

「…とりあえず、戻りましょうか
慣れない浴衣で疲れてしまってるのかもしれませんし」

「…うん、ごめん…」

いつの間にかりんご飴を食べ終えていたのか、優しくマーモンの頭に触れて撫でる風。
その感触が心地よく、マーモンは俯いたまま風の手に手を伸ばして遠慮がちに握り締めた。

「もう、先ほどから謝ってばかりではないですか」

「…うん…」










…あぁ…。










可愛いですねぇ…マーモン。










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